とむ

天気の子のとむのネタバレレビュー・内容・結末

天気の子(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

君の名は。は観てない勢。
でもめちゃくちゃ良かった。

正直、見始め30分くらいの
「みんなが想像するであろう『都会=怖い、汚い、人が冷たい』描写」が類型的すぎてちょっとうんざりしちゃったのは認めますが、
中盤以降、ひいては終盤の落ち着け方が最高でしたね。

僕は個人的に「物凄い大きなスケールで描かれているけど、よくよく掘り下げていったら実はごく個人的なことを描いている作品」っていうのが大好物でして。
この映画はまさにそういったお話だったなーと思うんですよね。

あとは編集がバチバチに良かった。
ラストのタイトルがまた表示されるところとか鳥肌もん。
思わず「完璧!」と心で拍手喝采でした。


レビューを見てるとマイナス意見として、
・スポンサー要素が強すぎて気になった
・帆高の家での理由が結局わからない
・ラストの展開あれでいいの?
等が目に留まりました。


僕も個人的に帆高の家出の理由描写が雑なのは気になりました。
ただ、よく見て欲しいのは帆高が船で島を出た時、彼の顔には絆創膏やガーゼなどが当てられていて、
その後にある猫に餌付けした後の
「俺、帰りたくないんだ…絶対…っ」
の言い方からしてもあからさまに平穏な家庭環境、もしくは友人関係ではないことがわかりますよね。

だとしたらあくまでこれはエンタメ作品であって、「天気の子」たる陽奈との話の外にあるイジメ、もしくは家庭内暴力についてはあまり深く掘り下げるべきではないのかもしれないですよね。

それでもやっぱ足りなくない?って思っちゃう人は、帆高くんが持ち歩いてた"The Catcher in the Rye"でググりましょう。

ということでここは許容範囲。


スポンサー要素が強すぎるのに関しては、
あれこそ「東京描写」として秀逸だと僕は思います。

「都会=怖い」の描写って、人ではなくむしろものだと思うんですよ。
新宿がメインで描かれたストーリーだったと思いますが、新宿にしろ渋谷にしろとにかくものが多く、氾濫している。
恐怖すら覚えるくらいに。

僕たちは目の前にあるスマホを見て、
耳につけたイヤホンから通じて情報を得る手段を得たから、何か一つに絞ってみることができるけど、
それこそ天から見たら世の中は取捨選択なんてできないくらいにものが溢れてしまっているっていうのが現実だと思うんですよ。


ラストの展開に戸惑いを感じてしまった人は、ミニシアター系の映画っぽい展開に少し置いてかれてしまったんだろうなと思います。
でもそれだって、本人たちは「自分たちのせいで」と言っているけど、考え方を変えて見てください。
「あの状況」は本当にただの天災で、帆高や陽奈のあの状態は全く関係ないのかもしれないじゃないですか。
だとしたら、あれはお婆ちゃんが言っていたように、「或るべき姿に戻った」だけなのかもしれないじゃないですか。


それよりも何よりも、2万かかるラブホに入ってからのなんとも言えない、切ない、苦しいシーンの妙じゃないですか。
飯を囲んだらもうそいつらは家族っていう表現にもなってますし、
それで言えば僕はあんなに旨そうなチキンラーメンは初めて見ました。

その直後にある陽奈の鳴き声の苦しさ。
あれは本当に声を当てた人がうまい。


兎にも角にも、人っていうのは元来自分勝手な生き物なわけです。
色々なタイミングが悪ければ離れ離れになってしまうし、ともすれば命を絶たれて離れ離れになってしまうことだってある。
だとしたら、フィクションで、エンターテイメントでならこれくらいワガママな終わりだっていいじゃないか。

だって、結局あの世界の人々だって、
あの街で楽しく暮らしてるんだから。


ちなみに本田翼の声優は言ってたほど気にならなかった。
つーかむしろよかった。
むしろ小栗旬の方が気になった。
とむ

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