唯

黒い司法 0%からの奇跡の唯のレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
3.3
「白人は黒人に囚人服を着せたがる。犯罪者は全員死刑だと思ってる」
本来公平であるべきの司法や政治の場自体が差別と偏見にまみれている恐ろしさ。
歪んだ正義感による差別は、組織ぐるみを通り越して国ぐるみでのそれが当たり前として横行する。

本来はどの人間も等しく価値があるはずなのに、社会の植え付けによって生まれながらにして罪を背負わされる者達がいる。
黒人というだけで人間扱いされず、生まれた時から冷遇されて来た彼らには、絶望と諦めしかない。人を信じられなくても当然だ。

「お前には分からない。ハーバード出のお坊ちゃんにはな。俺たちは生来有罪なんだ」
蔑まれる黒人の中にもエリートに対する偏見はある。白人と黒人、エリートと非エリートとの分断が前提となっている。

一人の人間としてではなく、まず黒人として見られる虚しさ、やりきれなさ。
あまりにも命が軽視されている恐怖。

ブライアンは死刑宣告をされた囚人達のために闘うわけだが、そこまで出来るのはやはり彼自身が黒人だからだ。
当事者や関係者でないと、その問題にまず辿り着かないし、辿り着いたとしても自分の中にないものは心に響かない。

警察がやっていることは、暴力による支配でしかない。
自己満足や快楽のための手段として人を駒にしている。
それが正しいかなんて考えもせずに。

一方で、正しいことを行おうとしている人間は迫害を受ける。
白人は、自分と異なる存在の黒人を異常に恐れては自己保身のために攻撃をする。
これがたった30年前の出来事とは信じられないが。

属性を前提として人は人を見るが、相手を一人の人間としてその存在を感じられると、途端に生きた人間としての実体とリアリティを持ち始める。
そうして心が動かされる。

明らかに無罪だと誰もが思う証言をしても、黒人だからという理由だけで有罪にしようと仕向ける裁判官や陪審員は、果たして頭がおかしいのか?自分を守るために不本意ながらの判断なのか?それともそれが正しいと思い込んでいるのか?

一人の人間の裁判だが、今の社会を象徴し、世界を動かすだけの力を持つ。だからリーガルものは力があるよなあ。
唯