LalaーMukuーMerry

12か月の未来図のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

12か月の未来図(2017年製作の映画)
4.3
フランスの教育現場のちょっといい話。先生によって生徒が変わる様子を描いたものが私は大好きですが、これもその一つでした。
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その変わり様がとても急だったり、振れ幅が大きかったりすると、現実はそんな風ではないでしょと突っ込みたくなる。そういうのが近頃は増えてきた(そういう風に切り取っているだけともいえるのだが、だとすればそういう演出はいらない)。でもこれは、その変わり様がとてもゆっくりで小さくて・・・ そのささやかさが感じさせてくれる未来への希望。いいですね。
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主人公はどっちかというと先生の方、パリの名門高校(アンリ4世校)のベテラン国語教師、フーコー先生。フランスでも荒れた学校問題というのがあって、そういう学校には経験豊かで優れた教師を派遣すべきという持論を彼は持っていた。それを耳にした教育省の大臣から、ある日突然の依頼が来て、なんとその派遣教師に指名されてしまう。
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もちろん晴天の霹靂、全く望んでなかった赴任先、郊外の荒れた学校(バルバラ中学)に、1年の期限つきで派遣され、そこで待っていたのは、いろんな民族ルーツを持つ生徒たち、やる気ない態度、低~い学力、半分あきらめ状態の他の教師たち・・・
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セドゥーという男子生徒との関係を軸に、荒れた教室のベクトルがほんの少しだけ上向きになっていく様子が描かれます。ラスト、一年後に元の学校に戻る先生にかけた彼の言葉がよかった。教師とは、しんどいけれど素晴らしい職業ですね
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実話ではないです。でもフィクションだから引き出せる真実もある。ちなみに生徒達はホントのバルバラ中学校の生徒。
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「レ・ミゼラブル」にまつわる話を聞かせて生徒たちの興味とやる気をひきだす作戦、いかにもフランスの国語教師。「君たちに一冊本を読ませること、それが私の野心だ」
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・「勉強が苦痛な子もいる。悪い成績が続き屈辱を味わえば自分を馬鹿だと思う。それが心の奥深くに刻まれる。 「学習性無力感」って聞いたことある? 魚や動物で実証されている、人間も同じ。失敗をすれば嫌になる」
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・「賢いと思われたネズミは本当に賢くなる。生徒も同じ、教師が生徒を信じれば学力は上がる。悪い生徒なんていない」
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指導評議会
フランスの学校には法に基づく指導評議会(CD)という制度がある。問題を起こす生徒の処分をきめる校内裁判のようなもの(校長・教師の合議で処分を決めるが、担任は評決に加われない)。一番重い処置は退学処分、学校側は教育の場を守るためという理由づけをするが、退学処分となった生徒には一生レッテルが貼られることになる。退学後は一定期間をおいて他の学校に入れるけれど、新しい学校でうまくいくことは難しい。そういう生徒が年間1.7万人もいるという。退学処分の濫用に疑問を投げかける内容にもなってました。