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クロースのRenのレビュー・感想・評価

クロース(2019年製作の映画)
4.5
泣きました。絶対に毎年観たいクリスマス映画のラインナップに余裕で仲間入り。あまり人の感情を決めつけるような発言はしたくないのですが、今作に関しては声を大にして言いたい。「これ嫌いな人いないでしょ!」

タカビーな主人公が争いの絶えない絶海の地に左遷されて人間的に成長していく、ウルトラハードモードな『カーズ』。教育も無ければ平和も無い劣悪な環境を、絵本のような温かみのあるアニメーションで見せてくれます。といっても安っぽさは一切無く、ライティングの感じなどはめちゃくちゃすごいです。2Dの限界に挑む姿勢が真摯でかっこいい。

物語が進んでいない瞬間の無い96分でした。デザインの可愛らしさ(キャラクターの描き分けも素晴らしい)、サンタクロースのオリジンストーリーとしての仕掛けの数、全年齢対象に間口を広げる工夫が何個も何個も込められています。

手紙を書くとおもちゃが貰える!を起点に、いがみ合っていた子ども達は仲良くなる。一方で大人は、対立の伝統から抜け出そうとしない。し、何なら大人がそこから明確に抜け出したような描写もありません。この感じがちょっとリアルであり、子どもたちの純真を素敵に(そこに漬け込むような意図無く)際立たせているポイントかなと思いました。
かつて島民が「対立」という形の無い幻想に固執してきたように、子どもたちは「サンタ」という形の無い幻想を抱き続ける、この対比が効いてます。

なぜサンタは煙突から入るの?赤い服を着ているの?暖炉に靴下をかけておくの?トナカイは空を飛ぶの?色んな疑問が、心温まるエピソードとギャグを上手く交えて解消されていくので、当然親子でも楽しく観られる映画かと。あなたの思った通りの展開になっていくけれど、先が読める展開なんだろうな〜と観賞を後回しにするのは勿体ない!

クロースが人ならざる者であるようなことを予感させるラスト。彼は実は、“なるべくして“ サンタクロースになった存在だったのでは?オリジンの “キャラクター“ ではなく、皆んなの大好きな “サンタという概念“ に帰着する感じが堪らなくお洒落!

その他、
○ タイトルにもなっている『クロース』は超キーパーソンではあるものの主人公ではない。『グリーンマイル』のタイトルが「ジョン・コーフィー」みたいな感じ(伝われ)。
○ 第一次世界大戦のクリスマス休戦を連想しないのは不可能なお話運び。
○ 一番好きな台詞は「これからも宿敵であり続けるために、手を組もう。」因果が逆転した異常性をここまで端的に一文で表せられるか。
○ 手紙が、人と人を繋ぐアイテムとして有効に分かりやすく登場する一方、非言語コミュニケーション(ソリをプレゼントするシーンは涙!)の尊さも忘れない。
○ 全てのキャラクターにエピソードが与えられているのも無駄が無く素晴らしかったです。
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