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劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzerのsanbonのレビュー・感想・評価

3.6
今から凄く矛盾した事を言うが、驚かないで聞いてほしい。

この映画はめちゃくちゃ"チープ"でめちゃくちゃ"くだらない"。

だからこそ、映画館で観なくては"駄目"なのだ。

今作は「仮面ライダージオウ」の初単独映画にして、真の最終回と銘打たれている作品だ。

仮面ライダーは10年に一度、それまでの作品を総括した"お祭り作品"が製作されるのが習わしとなっており、ジオウこそが20番目の平成ライダーにして平成最後の節目も担う、ライダーの長い歴史においても重要な転換点となっている。

そんなジオウはTVシリーズもなかなかに面白く、本レビューを投稿したちょうど次の日に最終回を迎える事もあり、タイミング的にも丁度いいと思い、それならと久々の映画館での鑑賞をするに至った。

仮面ライダーを映画館で鑑賞するのは、やたらと巷に"MEGAMAX"という言葉が溢れかえっていた2011年の「フォーゼ」以来であり、それ以降はレンタルでの鑑賞すらも遠ざかっていた。

今思えば、その頃から「イナズマン」だったり「キョーダイン」だったりと、子供そっちのけで大人に媚びへつらいだしていた東映だが、今作でもその"ノリ"は健在だった。

しかも、失意に陥った主人公をその"ノリ"の言葉によって立ち直らせるというなにげに重要なシークエンスに絡めてきたので、当然観ているちびっ子達からは「だれー?」の大合唱が起きていた。

大人には重要人物になり得ても、子供からしたら「みなさんのおかげでした」も終わりTVでもとんと見かけなくなって久しい今、どこぞの誰とも知れない人物がさも意味深な言葉を残して消えるのだ。

あの展開はこの映画内でも屈指の理解不能な場面だったに違いない。

おざなりな脚本のくせに、そこを大目に見てくれる子供達をガン無視してくるとは、これは確実な"殿様商売"スタイルである。

他にも、今作にはそういった「副産物ライダー」がわんさか登場して「ゴライダー」やら「G」やら、果ては"漫画の中"からも飛び出してくる始末。

ジオウは、珍しく昭和ライダーこそ絡めてこなかったが、今作でそれ以外のライダーは隅々まで網羅する勢いで登場させきった感があった為、本当にお祭り騒ぎのような熱量は感じる事が出来た。

また、今回良かった点として"笑い"に振り切っていた事は評価したい。

いつもなら、ヘンテコ理論の超展開を"カッコいい"演出に見せかけて押し通すスタイルがお馴染みとなっているが、今回はヘンテコ理論をヘンテコだよね!と言って見せてくれたので、こちらもヘンテコじゃーん!と思いながら観ることが出来て、むず痒さと小っ恥ずかしさに襲われる事があまり無かった。(全くとは言ってない)

ちょっと何を言ってるか分からないと思うが、特に最後の巨大化した敵ライダーが「平成」と打ち抜かれたボードを「小渕恵三」ばりに持って「れいわー!!」と叫びながら倒されていくシーンには圧倒された。

そして声を出して笑った。

それと同時に、これを家の小さなモニターで観ていたらと思うとゾッとした。

映画館の雰囲気のおかげで笑える状態にまでほだされていたが、普段の生活感の中にあれを放り込まれていたら、あまりの寒さにシラけすぎて多分オシッコちびってたと思う。

そんな恐怖体験をせずに済んだ事と、然るべき環境で観た場合には、そこそこ鳥肌ものの熱い演出は、胸にも響くものがあったので、レンタルでもいいやと思っている人がいたら、ちびってしまう前に是非劇場で観てほしい。

レンタルでも観ないよという方は、この事はすっかり忘れて大人しくお布団敷いて寝てください。

あと、同伴で来ていた後ろの席のお母さんが、最後に吐き捨てた「何が面白いのか分からない」の一言が鋭利すぎてトラウマになりそうだった。

ライダーヒロインは大成しないというジンクスがあるが「大幡しえり」には是非今後も活躍を続けて欲しい。

何故なら可愛いから。
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