Melko

シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢のMelkoのレビュー・感想・評価

3.8
「ロクデナシども!参加したいだけだと?参加の意味を教えてやる。勝ちに行くんだ!」

冴えないオッサンたちのウォーターボーイズ!
しょぼくれたオッサンがスポ根に打ち込む話は大好物だけど、なにせ2時間もあるから尻込みしてた。しっかり面白かった!
胸毛生えててお腹ぽっこりのtheオッサン体型×7人、意外と気にならなかったかなー。わたしも歳を重ねたということか…!
マチューアマルリックにギョームカネ、ジャンユーグアングラードなんて、フランス錚々たるメンバー出てるのに、このしょぼくれた感…みんなおっさんになったのねー

ポンコツなオッサン達のポンコツ加減と技術上達に向けてのスポ根シーンのバランスは、本家ウォーターボーイズと同じくらい。ただ、青春キラキラ✨なあちらさんとは違い、こちらは人生半周以上してるオッサンたちが主人公だから、情けなさの度合いが違う。それはもう気合の入った情けなさっぷり。
鬱、破産、家族に出て行かれ、娘に愛想尽かされ、モテない、ストレス、いつまでも夢を追いかける痛さ、ブス、デブ、ハゲ。これでもかとのしかかるアンハッピーな状況。
加えて、彼らを指導していた粗暴だが優しい女コーチは、元アル中の被害妄想。アットホームに楽しく♪「せっかくだし世界大会出ちゃおうぜ〜イエ〜イフランス代表〜🤘」とかホワホワ抜かしてたところで中盤、その女コーチが完膚なきまでにボロボロになる事案が発生。
後を引き継いだのは、彼女とシンクロデュエットを組んでいた、現在車椅子の元相方。この人が超スパルタ鬼コーチだったため、助長気味の前半から打って変わって、畳みかけるような後半。
シンクロに打ち込み、それぞれが己の抱える問題に立ち向かい、ついに迎える世界大会。緊張とストレスで吐く者、震える者…そして。

テンポも良いし、オッサン達が揃いも揃ってホントにイケてないのが逆に好感持てる。音楽も良い。冒頭から
♪ Welcome to your life〜ってTears for fears始まるのイカしてるし、
演目の曲が「俺たちの世代らしい曲」って選んだあの曲で、バーン!って始まるの、その年代の曲が大好きなわたしは最高にアガッた。更に、演目後半に感動音楽が挟まって「ええ〜…」ってシラけかけたところを、曲の終わりはちゃんと元の曲に戻ってきたところも良き◎

グッと来たのは、
選手以上に緊張してたであろう、見守る側、飴とムチを体現する女コーチ2人がみんなの演技を見ながらお互いの手をグッと握ったところ
「肩車して歩いたの覚えてる?」「昔の話でしょ」と会話してたロックな父と娘が、ラスト溌剌笑顔で肩車してたところ
そしてやっぱり、最後、とんでもなく綺麗な朝日を浴びながら並ぶ全員のカット
途中のグダグダとか、もう関係ないね!って感じるぐらいの清々しさ。

共感生羞恥な場面も、世界大会までにもっと体絞らな泳げないだろ、な疑問点とか、もうどうでもいいや〜
どんなことでも、全力傾ける人間は美しい!趣味だとしても、大会に出るなら、全力なのよ。人前に出て何かをやるということは、そういうこと。
どんなに練習がつらくても、結果が出なくても、全力の情熱を注ぐことは、美しくて、崇高だから。無駄ではないから。

そして、
「ありのままの自分を隠す必要はない。波風はあるけど、相手を否定しない」って言える妻も凄い!!
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