空海花

ボーダー 二つの世界の空海花のネタバレレビュー・内容・結末

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

レイティングR18を観る時、私は結構ドキドキする…いや15だってそうだ。実は怖がりなのだ(笑)ホラーは好きだがダメなのもある。映画館から逃げ出したくなったことさえある(笑)

この映画はファンタジーだ。でもダークファンタジーとも言い難い。異世界でも黄泉でもパラレルでもなく現実世界のあちらとこちら。『ボーダー』なのだ。なるほど。
レイティングは、これかー!ってわかるくらい衝撃。でも怖くはない。と思う。生理的ところを逆撫でしてくる。あわわわ(笑)でも観終わってしばらく経つと不思議と納得していて、むしろそんな場面を極力ここに絞って昇華させた業を賞賛したい。

「妖精」「トロル」「完璧な存在」
キーワードを散りばめつつ、もう一つの世界自体は描かれない。示唆されるのみで断片的。なのに不十分とも思わない。何だろう、何が正しいのかこちらは全く言い切れないのに鑑賞後に全て辻褄が合ったような気にさせられる感覚。叙情的でありながら論理的な物語、なのだと思う。

舞台は森。狐が会いに来る。
日本の森には神が宿り、寓話もある。おどろおどろしいものも。似ている感じもして、やっぱり違うとも思ったり、イメージは宇宙的に際限がなくなる。
あと、最近の作品にはないもっと根源的な差別を見た気にもなる。スウェーデンにも差別の歴史はあるようだが、どうだろう。それよりも自然信仰、動物界への造詣の深さに感嘆する。

ボーダーとは生物学的や人種的や異なる場所ではなく、心の境界。自分の中の尺度ではそれしか見当たらず、向こう側に行かない彼女に安心するしかなかった。でも彼女の幸せはどこにあるのだろう。それは本人の選ぶものだというありきたりの言葉は通用するのかとためらう。
知ってしまった故の孤独を思うと胸が痛む。ただ、ラストは救いがある。

見終えると特殊メークや撮影、キャスティングに演技、完成度が高い。何か一貫した精神性を感じる。それはおそらく美意識に通じる。
抱くのは未知のものに対する芸術性。今となってはボーダーは心だけではない。たぶん感じたもの全てだ。


どうでもいい気になる点は、森の中の演者2人はあの姿であんな場所で身体は大丈夫だったのかと心配に。
あと最後に主人公が着ていたニットが個人的に衝撃。結構かっこいいような。ああいうの普通に売っているのかな?欲しいような欲しくないような…(笑)

劇場内は思いのほかレディースデーでないのに女性が多かった。
実は『アイリッシュマン』3.5時間観た後、インターバル15分でこれを観た(笑)前日遅くまで残業していてハイになってました(笑)もう無茶はやめよう。。目が痛くて(笑)
空海花

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