まちゃん

イン・ザ・ハイツのまちゃんのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
4.0
なんと肯定感に溢れた映画なのだろう。ただ肯定感と言っても夢物語が描かれている訳では無い。むしろヒスパニック系の移民達の過酷な現実がテーマとなっている。移民の街ワシントン・ハイツで主人公ウスナビは食料雑貨店を営みながらいつか故郷ドミニカに帰る事を夢見る。ウスナビが思いをよせるバネッサは街を出てファッション・デザイナーになる事を夢見る。そして街の人々の期待を背負い大学に進学しながら挫折して戻ってきた優等生ニーナ。ハイツに留まりながらビジネスマンとしての成功を目指すベニー。登場人物のハイツに対するそれぞれの複雑な思いは実際の移民達の思いそのものなのだろう。また街の人々を見守る「みんなの母」アブエラはヒスパニック移民の歴史を背負う存在だ。これだけ多くの情報量を伝える手腕に驚いた。そして何といっても作中で流れる音楽とダンスの素晴らしさ。ラテン・ミュージックとヒップホップという現代アメリカを映し出したパワフルな音楽のリズムに体が自然と動き出した。ヒスパニック社会の人々にとっての音楽の重要性を身体的に体感できる。良い事、悪い事を含めて人生の全てを肯定してくれるミュージカルの傑作だ。
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