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劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明のshinoのレビュー・感想・評価

4.6
深夜アニメの完全続編新作アニメ。
色んな人に「これ好きそうだよね」って言われまくってたのでアマプラでTVアニメから見たんですけどなんかもうTVアニメ見てるときからずっと傷ついてた。面白い面白くないということは別としてとにもかくにもずっと傷ついてた。ナナチ……。
TVアニメ→映画とノンストップで見たんですけど終始「どうしてそんなことするんですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」って気持ちでいっぱいになりました。
キャラデザがNHK教育でやってるファンタジーボーイミーツガールものですよってツラしてるのでマジで勘違いしやすいのですが、中身はとんだメンタルブレイクアニメなのほんま詐欺やんけ。マジでキツすぎて体調悪くなった。これから観る人はメイドインアビスのことをミストとかレクイエムフォードリームとかそういうの観る気持ちで見てください。間違ってもボーイミーツガールを求めて見ないでください。

こんな感じで書いたけど、正直TVアニメも映画もかなり面白い………。
この物語に出てくる子どもたちは超能力も強力な武器も持っていない。無力で弱い存在という立場を徹底的に描いている。じゃあ大人は?と言われるとなんかもうどうしようもない大人しかいないので、本来なら守られるべき子どもが守られない存在となっているんですね。ただこれは子どもも労働力として数えられているのであの世界の価値観では弱者は切り捨てるもの、という価値観かもしれない。だってあまりにも死に対しての恐怖が薄すぎる。まあでもそういうのが普通の空気になってる、ってのもメイドインアビスという作品の怖いところかもしれない。

そしてこの映画の魅力といえばTVアニメのときでも少し出てきたどうしようもない大人ナンバーワン。地獄で鬼と悪魔から産まれたと呼ばれる、ボンドルド卿。主人公たちが立ち向かういわゆる「悪役」なんですが、このキャラを「悪役」と一言で言い表せないのが難しい。
ボンドルド卿はほんとに極悪人なのですが、わたしたちの歴史を紐解いても絶対ボンドルド卿みたいな人は絶対いて、その人のおかげで今の社会が成り立っている。コロンブスがアメリカに降り立ったから今のアメリカがある。今のアメリカがあるから、WindowsがあるしYouTubeがあるしマクドナルドもある、わたしたちはそれを享受している。その発展のうえに生活をしているわたしたちはどう批判できるのか。(コロンブスのインディアン侵略を肯定しているわけではありません。そういう歴史があって今の社会があるよねって事実の話)

ボンドルド卿を「色々なことを省略して教科書に載るタイプの偉人」って言ってる人いて、正直たしかに・・・・・・・・・となったんですよね。太宰治や三島由紀夫が今だったら毎秒Twitter炎上してるレベルの人だろうけどきちんとした文豪として教科書載ってるし。
そういう自分の享受している歴史と向き合わなきゃいけないから、ボンドルド卿は非常に難しいキャラクターなんですよね。それを見事に全くブレることなく描き行った作者は本当にすごい。すごいけど人の心はない。プルシュカの願いをそんな形で叶えなくても良くないですか?なんでそんなことできるんですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

正直作者の性癖をかなり感じるので漫画という発散する場所があってほんとに良かったね・・・・・・・・・・・・今の時代に産まれて良かったね・・・・・・・・・という気持ちでいっぱいです。何目線?
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