オルキリア元ちきーた

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明のオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

4.5
アニメ「メイドインアビス」のシーズン1から、次のシーズン「烈日の黄金郷」に繋がる為のエピソードをそのまま劇場版として切り取った作品。
原作者つくしあきひと氏の「癖(へき)」までしっかり描かれていて、かなり衝撃的な内容の作品のため、R15指定になっている。
子供の頃からアニメは私の大好きなコンテンツではあったのだが、最近の流行りの転生モノは作品としての世界観が好きではなく、鑑賞はしていたが気持ちが入り切らず、いつも傍観するスタンスだった。
独特の世界観を持つ他の作品「鬼滅」や「ジョジョ」や「呪術」や「チェーンソー」あたりも、見進める内に関心が薄れてしまう。「ゴールデンカムイ」でさえ、最後まで鑑賞するのに時間がかかった。
面白く観ている筈なのに、どこか、何かが足りない。
自分の歳のせいか?漫画やアニメに期待をし過ぎているのか?と思っていた。

本作もまた「他にもよくある冒険ファンタジーモノだろう」という冷めたイメージで見始めた。
最初はキャラクターの絵が苦手だった。
可愛らしい子供のデフォルメされた体型と顔立ちの絵柄に「また途中で飽きてしまうかも」と思っていた。

しかし、この作品は、そんなことを払拭する世界観とディテールに散りばめられていて、絵柄のギャップがむしろ演出的な効果を挙げている気がしてきて、目が離せなくなってしまった。

アビスと呼ばれる世界最後の謎の竪穴に挑む冒険者達の物語。
想像力を掻き立てられる生き物の生存競争の描写。
潜る事は出来ても戻る事が出来ないにも関わらず、それでも自分の目で真実を見るためだけに潜り進むストーリー。
その中に描かれるキャラクター達の背負う「業」の深さにすっかり魅せられてしまった。

その中でも本作「深き魂の黎明」の背負う「業」はかなり濃い。
R指定が妥当だと思わせるほど追い詰められる。
こんな話をよく思いつくもんだ!と圧倒されてしまう。

シーズン1をちゃんと観た後に、本作をしっかり鑑賞してからでないとシーズン2に進んでも話が繋がって来ない。
上手く作ったもんだ。

主人公リコは幸運なのか不幸なのか分からないが、気合いとレグやナナチのサポートで目的に少しずつ近づいている。
レグの運命はまだ分からないけれど、このままハッピーエンドになることは120%無いと思っている。ナナチもかなり深い業を背負っているので、結末を見届けないといけない。
原生生物も人間なんかゴハンかオヤツ程度にしか思っていないくらい容赦のない弱肉強食の世界だし、同じ探掘家も必死のサバイバルで騙し騙される世界。そして戻りたくても戻れない上昇負荷という「呪い」。
どこを取ってもハッピーエンドはあり得ない。だからこそ「その先」が気になって仕方ない。

気がつけば、残酷なシーンを欲している自分がいる。本作の提供してくれるカタルシスを求めてしまっている。ヤバくないか?自分。

聞けば原作者は筆が遅いので有名だという。シーズン2ももう見終わってしまって原作コミックも読んでしまった私は、もう次のカタルシスを求めてじっと待つしかない。