鬱アニメとして有名なメイドインアビスの中でも一際鬱なエピソード。
アニメ版のミ―ティーの顛末も鬱&涙だったが、今作も容赦がない。
やはり特筆すべきはボンバルド卿の底なしの人でなし度合いと、抗いがたい魅力だろうか。
私はアニメ版しか知らないのだが、恐らくアニメ版のボンバルド卿は原作を超えているのではないかと思う。
理由はその声。なめらかで、紳士的で、穏やか。しかし同時に人間性が欠落して気持ち悪い。
ボンバルド卿は本作屈指の人気キャラだとのことだが、その大きな要因は声優の森川智之の美声によると思う。
調べてみたら鬼滅の刃の御屋形様の声だったのか。1/f 揺らぎの声を担当しているとは、さすがだ。
ボンバルド卿は目的のために犠牲をいとわなず非人道的なのに、実験台になった子供達を大切にしていることは疑いようもなく、成れ果てになろうが、カートリッジになろうが、一人一人の名前も夢もちゃんと覚えているし、プルシュカの事も愛し、ナナチの事も可愛がっている。しかも自分だけ助かろうという保身も無く、自分も他人も等しく目的の前では平等だと思っているし、しかもその目的とはアビスの探求が人類のためになるという信念に基づいている。
彼が学校の先生とか保護司だったらすごくいい先生になったんじゃないだろうか。
もはや「愛って何なんだろう?」と問いたくなるレベル。
丁度ヴィンランド・サガを見ていて、「親が我が子を慈しむ感情は愛ではなく差別である」という話を見たばかりだったので、もしかしてボンバルド卿のこれももはや神レベルの愛なのでは?とさえ思えてくる。
突き止めた博愛や平等は人間には不可能なのだ。
ボンバルド卿に善悪の強烈な魅力があるからこそ、ナナチが見せるボンバルド卿への愛憎の入り混じるような複雑な感情も切なくなるし、ナナチの罪悪感を考えると怒りも湧く。
悪役であることは間違いないが、魅力に満ちている。
あとボンバルド卿、ビジュアルがいいんだよね。
グロい映像も多いし、痛がる表現も多くて苦手な人も多いと思うが面白かった。