まりぃくりすてぃ

クイーン ヒストリー 1973-1980のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

1.8
部分的に有意義だった。
レッドスペシャルによる音づくり、についての専門家による実演つき解説。「ボヘミアンラプソディ」のエンディングソロのピッキング位置(え、ネック下部!)なんて今まで意識したことなかった。レッドスペシャル不使用曲は「愛という名の欲望」と「ロングアウェイ」だけとか。為になったな~。

ほかは、ちょっとね。
中級程度のクイーンファンだったら誰でも知ってるようなことばかりを、冴えない見かけの音楽関係者たちがクドクドクドクド語る。クイーンが見たいのに、パッとしないオジサンたちばっかりずーっと見せられて、たまにクイーンが出てきたと思ったら静止画だったり、ネットで普段見れてる公式MVばかりだったり。
歯並びの悪いハゲ氏が特に見苦しくってね。やたら体揺らすし。そんなオジサンたちの “問わず語りインタビュー” の撮り方は、ビートルズアンソロジーとかでとっくに確立されてた「座ってる人を画面の左半分あたりに置いたまま、ずーっと同アングルで」。画質も悪いし、21世紀の映像作品的じゃあない。
しかも、ギター実演の人以外は、それぞれ不正確っぽい知識しか持ってないくせに主観交じりでさ。。。。


◆罰として帽子食べさせたい、不正確な語り◆

❶ 「クイーンは初期二枚までがアルバム中心主義。以降は70年代には珍しくシングル中心のバンドだった」→→ ほんと帽子食べてほしいぐらいにデタラメ。クイーン初のコンセプトアルバムは二枚目であり、三枚目以降もさらなるトータリティーをめざし、四枚目でアルバム中心主義は頂点に達したよ。五枚目はそれの姉妹作。六枚目以降は曲の多様性がさらに広がっていって多少バラけた感じにはなるが、アルバムごとの色を彼らは明確に出しつづけた。「僕らはシングルヒット狙いで曲を録音することはない。常にアルバム第一だ」という発言は、80年になってもインタビュー等で続けたらしいよ。実際、シングルヒットの寄せ集めみたいなアルバム作りをしちゃったのは、チームワークに乱れが生じてたザ・ワークスの時だけ。これは常識。

❷ 「ザ・フーらがアルバム一枚でやってたことをクイーンは一曲でやったんだ。ボヘミアンラプソディはそういう名曲だ」→→ ザ・フーのクイックワンのロックンロールサーカスバージョンを聴いた者ならばそんな決めつけはできないはず。ロックンロールサーカスの発禁が解かれたのは90年代だから、音楽関係者は当然この映画の時点でクイックワンを聴き込んでなければいけなかった。

❸ 「初期はボーカルがサウンドに埋もれていてクイーンはブライアンメイ主導の“ロックバンド”にすぎなかった。キラークイーン~ボヘミアンラプソディの頃からようやく、曲をメロディーとボーカルが支配するようになり、ジャンル分類不能な唯一無二のすばらしいクイーン音楽が確立された」→→ ボーカルを楽器の一つとして取り扱うというのは、60年代後半にビーチボーイズの絶対的リーダーのブライアン・ウィルソンが考えついた超画期的なプロデュース法であり、それは “ロックという単純さ” とはむしろ真逆の、至高複雑芸術性。ボーカルがほかの音たちと溶け合ってて何が悪い? 言っとくけどもクイーンは解散時に至るまで常に一義的にはロックバンドであり、ロックバンドがオペラやソウルを取り入れたから世間をびっくり仰天させたんであり、あくまでもクイーンがロックバンドでありつづけたというジャンル的帰巣性こそがそもそもすべての偉大さの基本になってたはず!

❹ 「『世界に捧ぐ』は、ウィーウィルロックユーと伝説のチャンピオン以外に取り柄のない不出来なアルバムだ。傑作と駄作がこういうふうに交互に来ててファンを戸惑わせた」→→ 当アルバムからのセカンドシングル「永遠の翼」をクイーン史上最高傑作級とする声が世界中から上がってるのに、無視? ちなみに私の友達は「マイメランコリーブルース」がアルバム中で一番好きと言ってる。私の母はロジャーファンだけども「シアーハートアタック」とともに「恋のゆくえ」「イッツレイト」を絶賛してる。

❺ 「『ジャズ』では四人全員が曲を提供」→→ とっくの昔の三枚目アルバム以降、常に四人全員が曲提供してますけど?

❻ 「『ザ・ゲーム』にはヒット曲が二つ収められてる」→→ ザ・ゲームにはヒット曲が五つ。「愛という名の欲望」と「地獄へ道づれ」のほか「セイブミー」「夜の天使」「プレイザゲーム」。

❼ 「フレディの貢献は大きい。フレディがいなければクイーンがあれほど成功することはなかった」→→ バンドにおいてフロントマンの特にリードボーカリストが多大な貢献をするのは当ったり前。普通そうでしょ。あのヤードバーズにおいてさえもボーカルは(少なくともクビにはならず)威張ってた。

❽ 「クイーンは70~80年代の音楽界に影響を与えなかった。クイーンと同じことや似たことをするバンドは出現しなかったのだ。クイーンの唯一無二性をみんな理解していたから」→→ たぶん、違う。クイーンがあまりにも凄すぎて、真似したくても誰も真似できなかっただけだよ。結果として唯一無二になった。


◆ところで・・◆

名前が出てきた回数。フレディ約112回。ブライアン約91回。ジョン4回。ロジャー3回。
ロジャーは、まるで居ないかのように画面にもほとんど登場せず、言及されたのは「バンド結成時に居たこと」「トライデント社との契約時にブライアンとともに不安がったこと」「ザ・ゲームの時にロックイットを書いたこと」だけ。ロジャーなしには成り立たなかったコーラスワークについてもこの音楽遺産考察映画は触れてない。(母と一緒に見なくてよかった。。。)
私は、まあ、世界一のジョンファンかもしれない者なので、演奏映像のたびに無意識にジョンばかり探してた。イケてるジョンも、ダサめのジョンも、全部好き。

ということで、、、、、、ずる賢い人たちが作った去年の悪質映画が『ピョッペルビアン・ラブソッテン』だったのに対し、この『クイーンヒストリー前編』は、頭の弱い人たちが作った無機質映画ってとこかな。両作の共通点は、70年代のクイーンのきらびやかさが記録されてないっぽいこと。フレディ以外はなお存命なのにメンバーのインタビューがここにないし。(ちょっぴりだけフレディは出てきた。)あ、最初に書いたとおり、ギターやアンプの解説だけは良かったっ!!!


[アップリンク吉祥寺   サンロードのほうで、長蛇の列がいつも出来てる某店のメンチカツ二個も食べたら一個目はジューシーで美味だったけど最後ゲロしそうになっちゃった。映画館のクラフトコーラは最高だった]