まーしー

燃えよ剣のまーしーのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
4.5
新選組副長・土方歳三の半生を、近藤勇や沖田総司との交流、架空の人物・お雪との恋模様などを交えながら描いた歴史ドラマ。
岡田准一、鈴木亮平、柴咲コウという大河ドラマの主役3人が出演。原作は司馬遼太郎の同名小説。

感想を一言で述べるなら、2時間半でうまくまとめたという印象。全体的に駆け足感は否めないが、うまく緩急がつけられていた。
「芹沢鴨の暗殺」や「池田屋の変」は少し丁寧に、「禁門の変」や「油小路の決闘」はあっさりと描かれている。よって、観る人によっては評価が分かれそう。
私は原作既読ということもあり、理解しながら鑑賞することができた。
また、沖田総司の恋や、土方歳三と名刀・和泉守兼定の出会いなど、新選組を語るうえで必要な逸話も散りばめられており、決して中身が薄い作品ではないと思う。

個人的には、激動の時代を義に生きた土方歳三の姿に感動した。
幕府のために新選組という組織を率いた土方。彼の考えは立派な「組織論」と言えるだろう。
例えば、局長の近藤勇に人望が集まるよう、自ら嫌われ役を買って出たところ。
次に、隊士が常に緊張を保つよう、切腹・斬首と隣り合わせの隊規(局中法度)を定めたところ。
そして、局中法度に基づき、仲間であれ情を挟むことなく処罰したところ。
250年以上にわたる徳川政権によって平和ボケした幕臣が多い中、こうした組織論の実践が新選組の活躍に繋がったのだと思う。

しかし、そのような新選組も戊辰戦争で追い詰められる。
戊辰戦争の結末を知っているだけに、近藤勇と土方歳三の別れのシーンは涙が出そうだった。
もし生まれてくる時代が違っていたら……二人は多摩の農村で長く付き合い続けられたに違いない。

聡明とされている徳川慶喜が、本作では凡庸、いや、むしろ阿呆のように描かれていた点だけ違和感があった。
一方、ウーマンラッシュアワーの村本大輔が演じた山﨑烝は早口でコミカル。印象に残った。新選組には有名な人物が多いため、永倉新八や原田左之助などは本作では端役扱い。
それでも、史実に沿いながら個性あふれる登場人物を描き、物語の展開同様、キャラクターにもメリハリがついていたように思う。

以上のように、私はストーリーや登場人物に魅かれたが、出演者たちによるアクションも素晴らしいと思った。
他の史劇と違い、刀と刀が交われば火花が飛び、人を斬れば血しぶきが飛ぶ。俳優の立ち振る舞いにも無駄な動きがない。
私が観た中で、一番迫力ある、かつリアリティあふれる殺陣だった。

今年劇場で鑑賞した作品の中では、一番の高評価。
観る人それぞれに新選組のイメージがあるため、決して万人受けする作品ではないが、私は熱き男たちの雄姿が鑑賞後の今なお目に焼き付いている。
そして、「池田屋の変」の時に流れた挿入曲『死闘のハバネラ』が頭の中でヘビロテしている。
ぜひ、多くの方にご覧いただきたい。

……熱い想いが溢れて出てしまい、長文失礼しました。