茶一郎

フォードvsフェラーリの茶一郎のレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.4
 地面とマシンすれすれに接近する途轍もないレース映像、骨太な「持たざる者の物語」、芸術家vsマーケティング、三種の神器で観客の意識をドライバーのレース体験に限りなく近付ける『フォードvsフェラーリ』。

 間違いなく今後のレース映画の基準を底上げする一本、その理由は本作が軸足を「レース」以上に、レースより上位のゲームに大きく視点を移した事によります。「vsフェラーリ」のゲームに勝つために、主人公たちは「vsフォード」の戦いを強要される。この複雑な「ゲームを支配するゲーム」の構造こそ『フォードvsフェラーリ』の優れた点、そして苦労人、職業監督ジェームズ・マンゴールドはこの構造を「映画製作」に重ねたそう。

 『グラン・トリノ』……『アド・アストラ』、『アイリッシュマン』と、モータースポーツの世界のような男性性を相対化する映画が作られた2019年に、こんな古臭いのにも関わらず観客に「傑作!」と言わせる作品が生まれた事は記憶に留めておきたいです。

 動画でもレビューしました
 https://youtu.be/hko0nIMLOgg
茶一郎

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