このレビューはネタバレを含みます
レト公爵、ダンカン、ガーニイ、カインズ博士……散り際が美しいんだよなぁ。
散り際が印象的な作品といえば僕の中では「仁義なき戦い」なんだけど、あちらは盛者必衰による儚さなんだよね。
本作では、美しさだとか気高さに心を打たれた。
また、叙情詩的映画と呼ばれる通り、ベースが人間ドラマなのが良い。
だからSFなのに自己啓発的っぽいところもあったりして、「どんなに辛い立場に追い込まれても最期は自分の生きた道に誇りを持って散りたい」と思わされる。
つくづく人生は締めくくり方が大切だなぁと。
「友に会え
生命の神秘は解くべき問題ではない
経験するべき現実
止めては理解できぬ1つの過程だ
その流れと共に動くのだ
その過程に加わり流れるのだ
任せよ」
その言葉と共に、振動する砂の映像が映されるのは、変化への適応を示しているのか。
おそらくポールが今後フレメンと共に行動をしていくにあたり大切な考え方になっていくのだと思う。
これも哲学的であり、自分の生き方にも組み込めそうなところがまた興味深い。
一方で、この柔軟性は僕自身が惚れたダンカンやカインズ博士の一本筋の通った散り際とは真逆にも見える。
ポールはその両方を手にしながら戦っていくことになるのか。そこが楽しみでもある。
やはりドゥニ・ヴィルヌーヴのSFは、映像面も良さもさることながら、心の扉を静かにノックしてくるようなところが素晴らしい。
マーティン・スコセッシ同様、一つの映画が長尺。
両者とも「無くても物語は理解できる」という類の繋ぎのシーンがきめ細やかに配置されていて、パッと挟まれる情景や瞳の動きだけで語らずとも様々なことを感じさせてくれるんだ。
これまで苦戦続きで、かつてはデヴィッド・リンチも挑戦してきたDUNE。
本作を成功と言っていいレベルまで導いたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、今最も安心してSFを任せられる監督なんじゃないかしら。
導線整理の巧さがえぐい。
正直、あくまでも前編という感覚は否めず、盛り上がりに欠けていたのでこれぐらいの点数にはなってしまうけれど、とても質の高いSFを鑑賞できて満足度はかなり高いです。