はる

スキャンダルのはるのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.8
今作の体裁は好きなものだと感じた。多くの方向に向けられた鏡のようで、観る者のリテラシーに委ねてもいる。
個人的にはニコール・キッドマンが久しぶりに悪いところ出してきたなと思いながら、プライベートな時間を演じている時は薄いメイクで、そういう彼女は好演に繋がるなと過去作を思い返した。ただしアレはノーメイク風のメイクなのだろう。
ニコール、シャーリーズ、マーゴットという並びは壮観だけど、実はほとんど共演しておらず宣材で使われているエレベーター内の3ショットが唯一揃ったものだったと思う。

ネタバレになるが、構成としては主要な登場人物がそれぞれ交わらずに進んでいくためにやや散漫な印象も受ける。いわゆる団結するような描写がなく結果としては告発者が増えてはいたけれど、女性同士の間でも態度は分かれるものになっていた。それが現実なのだろうが、それでも権力者を断罪し表舞台から引き摺り下ろすことはできた。これが重要に思える。
限られた誰かの物語ではなく、辛い思いをした大勢のものにしたと受け取っているので、結果として作品の出来に寄与しなかったとしても、それはそれで仕方ないのかと。

グレッチェンの呼びかけにもなかなか他の被害者の証言が集まらないところからの流れで、声を上げられない彼女たちの心情をカイラやジェスが代弁する。メーガンやグレッチェン、その他様々な女性が過去に受けたと思われることの再現を担うカイラ役のマーゴットは難しい役どころだった。そしてジェスという人物の造形も今作にアングルを与えているが、ケイト・マッキノンの演技含めて強く印象に残る。ちなみにケイトはSNLでヒラリーのモノマネをやっていたので、ジェスの部屋にヒラリーの写真があったというくだりは笑うところだったのだろう。

今作はまったくもってスッキリしない終幕だけれど、それがメッセージにもなっている。描かれたような事柄は今でも構図を変えて偏在していて、立場の弱い者たちが不当に扱われている。なにも解決していない。
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