ぐち

スキャンダルのぐちのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.8
え〜〜すごい良かった…想像より良かった
素直に面白い!って言えるエンタメ性もあったそして面白い!だけで終わらない後味もあったでも面白い。何だこれすごいな。

実際の性暴力被害を扱っていて訴訟の結果は知らずに見たんだけど、現在トランプは大統領だしFOXは未だにのびのびやってるし性暴力について世界はhell👎な現状にいるとこの映画も気持ち良くは終わらないんだろうな〜〜って思ってて、まぁ実際女が力を合わせてゲス野郎を叩きのめす!みたいな爽快感と単純さのある映画ではなかったんだけど、でもすっごい楽しんで見れたし勇気づけられる。未だに世界はhell👎だけど中指立てて🖕生きて行こうぜって気持ちになれる。

編集と演出がうっまいな〜〜!
テンポ早めの小気味いい展開、台詞の応酬、カット割。
出演者が第四の壁を破って観客に語りかけ、組織を取り巻くシステムを解説したりキャラクターの現状や感情を説明したりするやり方は近年だと『マネーショート』を思わせる。今作だと特に主要人物が情報番組のキャスターであるというのを上手く活かしてる。
キャラの感情をボイスオーバーで語らせるというやり方は今時珍しいが、現代的にアップデートされたスマートな編集になってて唸った。

一人の女性キャスターがFOXチャンネルという超保守的な巨大メディアで、TV業界の帝王とも言われるボスを性暴力被害で訴えることが軸になる話だが、同じように加担していた男性、自分に被害は無いけど何が起こってるか知っている女性、何も知らなかった男性、被害に遭っているけどその分恩恵を受けたと捉えている女性、受けた被害は許せないけど対価の恩恵に複雑な思いを抱える女性、今まさに被害に遭った女性、力になってくれる人、見て見ぬ振りをする人、それに罪悪感を抱えながらも何もできない人、、、、単なる●vs◯にはしない、複雑な人間模様が、でもスマートに描かれているのがすごい。

3人の人気実力保障付きの女優が共演しているのが本作の売りの一つだが、この3人はさほど絡まず別軸で動いている。
3人ががっつり演技で共演するのを期待して見るとやや肩透かしを喰らうが、緩やかでも確実に繋がる物語の線が上手い。
特に予告でも使われている、エレベーターで3人が揃うシーンは秀逸!物語の「転」となる部分で、3つバラバラに動いていた線がごく自然に収束し、新たな展開に伸びていく糸が見えるようだった。
エレベーターの緊張感とその後の展開を予感させる興奮のつくりかたはお見事。
サスペンスやミステリのようなハラハラドキドキワクワクのある映画になってる。


-------ちょいネタバレ----------


3人は一致団結するような仲ではなくて、味方でもなく敵でもない。しかし緩やかに連帯(連帯という言い方が一番しっくりくる)する彼女たちが、一人一人が示し合わせることなく、でも影響し合って大きな何かに対峙しようと立ち上がるシーンは涙が出てしまった。

それぞれに背負っているものや立場、守るもの失うものが違って、完全に手を取り合うには至らないことにこの問題の根深さと現実の厳しさを思い知る。
ラスト、大統領選に勝ったトランプのニュースとFOXが支払った被害者への賠償金と加害者ロジャーへの退職金の金額が現実を突きつけると同時に、グレッチェンとメーガンの表情、カイラの行動、何よりエンドロールの力強いレジーナ・スペクターの歌声が響く『One little soldier』の楽曲が、世界の個々のリトルソルジャーたちをエンパワメントする。

相変わらず今も世界はhell🖕だけど、2016年に起きた実際の騒動を元にしたこの物語の後、ハリウッドでは2017年にワインスタインの所業が告発され2020年の先日ついに有罪判決が下った。
一人一人の小さなソルジャーたちが立ち上がり、世界は少しずつでも変わっている。
そう思える映画に仕上がっているのが何より良かった。
ぐち

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