おときち

ミッドサマーのおときちのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.8
なんだコレは。


観終わった後、隣の席の知らない人に「なんかすごいですね、コレ」って声をかけたくなった。黙って一人で帰るの嫌だった。帰りの電車でずっとモヤモヤ。誰かとこの映画について話したい、って思ってた。


「前代未聞の”フェスティバル・スリラー”」。そう、怖い。
いろいろ怖いが、怖いというより不気味。
観る人によっては気分が悪くなるかもしれない。


妹と両親を失った大学生ダニー。民俗学を学ぶダニーの恋人、クリスチャン。その友人ジョシュとマークはスウェーデンからの留学生ペレの地元で90年に1度開催される夏至祭へ行くことになるのだが…。

スウェーデンでの祝祭の場面から始まるのではなく、ダニーたちの背景が先に少し描かれていたので、ラストまで観たときに意外と納得できたような気がしなくもない。いや、実際のところまだよく分かってないかもしれない。

でもあそこにある種のカタルシスがあったのは間違い無いと思う。


青い空。青々と茂る草木。
白い民族衣装に色彩豊かな花々。
清々しく美しい風景、場面ばかりなのに、思い出すと恐ろしい。
ずっとトリップしてるみたいな感じの映画だった。


伝統として伝わる儀式。いろいろとあり得ないことが起こるのだが、伝統行事だから「当然」のことでそれについて誰も疑問を抱かない。
さらに悪意もゼロ。
こういうあたりがいちばん怖かったかも。


画の切り取り方、カメラワークなど美しいしかっこいい。
ドローンも多用して俯瞰だったり、天地が逆転したり。ここらへん何かを仄かしている気もしたけど。


当事者たちにとっては大切な宗教的儀式であるからこそ、よそ者が口を出せない、出しにくい。「いやいや、おかしいだろ!」って思っても、あまりにも当然の儀式・行事として粛々と進んでいくので、だんだん観ているこちらも麻痺してくる。


あのコミュニティで行われていたこと全てを肯定できないけど、ある人たちにとっての宗教、信仰や価値観などについて、軽々しく部外者が口を出すべきではないなぁと。いろいろ考えると難しいなぁ。そういうことが描きたかったのかしら。
でも見方によっては恋愛映画かもしれない。
変なスッキリ感もあったし。不思議な映画だ。


ずっとスクリーンに釘付けになって観ていたけど、たまに「ほら、こうやったら不気味でしょ?」って言われているような感じをちょっと受けたかな。



いちばん怖かったのは全てを知ってて誘ったペレかもしれない。


アリ・アスター監督作品初めて観ました。
『ヘレディタリー/継承』も観たい。