みそらしど

82年生まれ、キム・ジヨンのみそらしどのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.5
性差を映画や書籍のテーマにしている人が韓国にはちゃんといる。日本はどうだろう…。先日ミン・ジヒョンさんの「僕の狂ったフェミ彼女」を読んだこともあり、そんなことを考えた。

これまで長年「当たり前」として染み付いてしまった男女の役割。それが人々の中から抜けきらないうちに、女性の社会進出や男性の育児参加が求められるようになって、いまを生きる私たちは本当に苦しい転換期にいると思う。
少し前と比較すれば、多少はジェンダーに関する認識は変わってきてはいるような気もするけど、「なんだかんだ子供の世話をするのは女性」「男性は家事育児を『手伝う』」みたいな考え方がまだまだ多くの人の中にあると思う。最近の社会の流れに合わせて表面を取り繕って欲しいんじゃない。このままではいけないと思って、自分の無意識的な認識まで考え直して欲しいんだ。ジェンダーの話はパフォーマンスではないし、パフォーマンスにしていてはいけないのだとみんなが気づかないと、男女共にずっと苦しいままだ。

ジヨンの夫が、ジヨンを気遣ってすることや言うことが、少しずつ、でも確かに的を外していて、なんとも言えなくなる。あのシラける感覚を感じたことある人、多いのでは?
他人ならば、気遣ってくれる気持ちだけでもありがたいかもしれないけど、家族ならそれだけではやっぱり厳しいよな…。

ジヨンが女性の人生を歩む上でぶつかったこと、精神に支障をきたしてしまったこと、自分がいかに追い詰められているかなかなか気付けなかったこと、どれも特別なことではない。
ジヨンは私たちで、逆に言えば私たちもこの映画の主人公だと思う。

原作も読みたいです。