Ay

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのAyのレビュー・感想・評価

3.6
本作は、サンフランシスコの実情について少し調べてからの鑑賞をお勧めします。

BBCが外部専門家に委託して書かれた2018年の記事の見出しは、"年収※1300万円でも「低所得」米サンフランシスコの実情"。(※4人家族での世帯収入。一人暮らしの人が最低限の生活を送る為に必要な年収は約760万円だとか。)

サンフランシスコ、今や有名IT企業がこぞって集結し、富豪が住む街として知られるその裏には、広がり続ける格差が生まれている。
急激な発展により生活費・家賃が高騰し、仕事がある人でさえもホームレス生活、更にキャピングカーで生活(車上生活)する人が増加しているそう。
因みに、本作では不法占拠(空き家に住む行為)も描かれる。

そんなサンフランシスコのベイエリアに住むジミーと親友モントの日常と変わりゆく街を映した作品。

立派な家々が並ぶその中に、ヴィクトリア朝時代を彷彿させる美しい邸宅があった。
ジミーの祖父が1946年に建て、かつて家族で住んでいた愛情深い家。
現在は家の手入れを怠る夫婦が住んでおり、ジミーは煮え切らない思いを抱いていた。
そんな折、夫妻が家を売りに出すことが分かり、なんとかして祖父の建てた家を取り戻そうとする..

変わり果ててしまったチグハグとした街で、優しさと哀しさとが入り混じる作品。
この映画、どこの画をとっても美しい。
A24作品、これからも非常に楽しみです。


つい最近SNSで、アメリカ(街明記無し)に住む日本人宅のドアをガチャガチャと開けようとする人物を捕らえた防犯カメラの映像が流れてきた。
他の日には、家に人がいるか確かめに来たこともあったよう。
どうやら、家の売り看板を出していたらしい。
空き巣に入ろうと思ったのか、不法占拠を狙ったのかは不明だけれど、投稿者は非常に怖い思いをしただろう...
本作を観てこの投稿を思い出し、不審者の真意は不明ながら国の抱える大きな問題を垣間見たような気がした。
Ay

Ay