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アメリカン・ファクトリーのAyのレビュー・感想・評価

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)
3.7
アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞!バラクオバマの製作会社が手掛けた1作目を投稿〜

非常に興味深いというか、唸らせる仕上がり。
オハイオ州の工場が不況で閉鎖する事になり、従業員達が失職する寸前、現れたのが中国の企業。
工場は再開され、路頭に迷う事になると絶望していた従業員達は中国企業の会長を拍手で迎える。

ただそこから唸らせるのが、文化の違いで、特に中国の工場での軍隊のような朝礼にポカンとするアメリカ人スタッフと映画のBGMが絶妙で非常にシュール。
彼らを真似してアメリカの工場でも朝礼を行ってみるが従業員達の反応は鈍くグッダグダ。笑

ちょっとクスリとしちゃったのは、
「アメリカでは従業員の無駄話が多いって聞くけど?」という中国人スタッフの問いに
「彼らには口にガムテープを貼るのが効果的だよ」とアメリカ人スタッフが答えると、
「出来るの?」というマジレス。笑
「冗談だよ..例えばの話..」
これは私たち日本人にも言える事だけれど、ジョークが通じない真面目な人間性。

んで、次第に問題はブラックな環境へ。
中国では月1〜2の休み、低賃金、残業当たり前で仕事三昧、しかし勤勉が故黙々と仕事をこなす。

対してアメリカは人権を主張してきた国、いくら職が無いとはいえ、会社にへつらう事はせずプライベートの時間は優先だし、危険なことは回避する、更に疑問に思う事はどんどん主張していくのだよ。
んで、企業と従業員が衝突するわけね。

従業員の連帯組織である労働組合がアメリカの企業には多く存在して、雇用を維持し改善する為の組合なんだけど、ブラックな環境に身を置くアメリカ人従業員達がこれを立ち上げたいと言い始めるのね。
でもこれに猛反対するのが中国企業の会長。
組合立ち上げに賛成する人間を解雇し始めるのよ。
これをやり始めると独裁者と言われかねなくなるのよね〜

※因みに、その昔のある労働組合とマフィアの関係を描いたのがマーティンスコセッシの「アイリッシュマン」。

このドキュメンタリー、ラストも中々唸らせる展開に進み、失職者に手を差し伸べたはずが、経営を考えた時に取るのは生産性や効率を高める手段というね。

どちらかというと日本はドキュメンタリー映画での中国企業寄りだから、観ていて、あぁなんだか知ってるなコレってなる。
約2時間があっという間だったよ。
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