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スウィング・キッズのAyのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
3.6
※試写レビューの為長め
1951年朝鮮戦争下、アメリカが管理する韓国最南端に建てられた巨済島捕虜収容所には、北朝鮮と中国共産軍の捕虜が収容されており、更に、思想の違いが故その収容所は共産主義と反共産主義で区分されていた。

本作は、ガチガチの共産主義である収容所の問題児ロ・ギスが、元ブロードウェイダンサー米軍下士官ジャクソンのタップダンスに目を奪われるところから始まる。
黒人であるジャクソンは、同胞であるはずの米兵達から人種差別を受けていて、一人でタップを踊る事が唯一の楽しみ。

そんなジャクソンのタップに魅了されるギスだが、捕虜であるギスが敵国アメリカのタップダンスを踊るなんて言語道断、最低な祖国への裏切り行為。
だけど、寝ても覚めてもリズムが頭から離れない、踊りたくてたまらない、っていう葛藤がテンポ良く描かれている。

北の収容所と比べられている南の巨済島捕虜収容所所長はイメージを向上させる為、ジャクソンに捕虜とダンスチームを結成し披露しろと言う。
ジャクソンには沖縄に妻子がいて、辞令を出して貰う為に渋々その命を受けることに。

集まったメンバーは、ギスの他マルチリンガルである民間の女の子、捕虜である心臓が弱い中国の振付師、生き別れた妻を探す一途な男性と、個性豊か。

戦争、人種、政治的思想、全てが異なるメンバーが、ひとつになりタップダンスを踊る。

色や音楽がオシャレで、その上コメディっぽく仕上がっていて、最近で言うジョジョラビットのようなポップささえ感じる。
ただ、後半につれ戦争とイデオロギーを描くには、致し方ない重い展開のギャップに若干心が追いつかない。
なぜなら前半のコメディー色が強いから。

あとは、映像加工はいらないかな、あれがあると一気に安っぽくなる、ので残念。
"超人"なんて求めていないから、ダンスに加工も不要。
十分勝負出来るでしょ。

とは言え、ストーリーのテンポも良いし、やっぱりタップダンスかっこいい。
ギス役を務めたのはD.O.、韓国のアイドルグループに所属しているんだってね。
ジャクソン役を務めたのは実際のブロードウェイトップダンサー。

一心不乱に踊る姿に釘付けで、メイキング映像まで観ちゃった。
"あぁ、きっと彼が踊るのはこれが最後だ"と思わせるような力強いタップにグッときた。

因みに、スウィングキッズは、韓国では有名なミュージカル「ロギス」が元の作品。
実際に存在した巨済島捕虜収容所と、従軍記者が撮った1枚の写真から着想を得たストーリーだそう。

ダンスと言語の特訓約5ヶ月間、韓国で公開されてから2年越しの日本公開は2月21日です☺️
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