LalaーMukuーMerry

処刑人のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

処刑人(1999年製作の映画)
4.2
タイトルの意味は日本で言えば「天誅でござる」。ボストンの街を裏側で牛耳るロシア系やイタリア系のマフィアのボスたち。彼らだけをターゲットに殺しを行う正義の二人組。世間は英雄とたたえる謎の犯人を、天才的な推理能力を持つFBI捜査官が追う。人物キャラといい(特に捜査官=ウィレム・デフォー)、ストーリー展開といい、ユーモラスな演出もあり、吹っ切れていて、すご~く面白かった。
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一方で、この主人公達をどう思うかを道行く一般人にインタビューするシーンでラストを締めるという冷静ぶりが、作品全体の印象と温度差があって、そこも面白い。自分がその場にいたらどう答えるか考えると良いでしょう。
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私の答えは、決まっています(大抵の日本人はこう思うと信じているが…)。二人の行いを認めてやりたいという気持ちも心情的にはわかりますが、これは決して認めてはいけないことです。マスメディアも彼らを持ち上げる報道をしてはいけません。二人は殺人犯に過ぎません。どんなに格好いい理由があっても殺人は犯罪です(例外は、正当防衛と役務(死刑執行人)と公務(戦争)の場合だけ)。信頼できる警察と司法の組織があるのなら、悪者の逮捕、裁判はそれに任せればよいのです。(とは言うものの、信頼できない部分があるのも事実だし、マフィアをのさばらせたままにしている警察には反省すべき点もありそうだが…)
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アメリカ合衆国憲法修正第2条には、人民の武器を保有する権利が保障されている。こんな権利を認めているのは主要国ではアメリカだけだ。これが銃規制に反対する勢力に根拠を与えている。この権利意識とひとりよがりな正義感が結びつくと、この主人公のような人物が生まれて来てもおかしくない。
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こんな人物はめったに出なくても、アメリカの銃による殺人事件の数は他のどの国よりも桁違いに多いのは紛れもない事実だ。それが分かっていても、アメリカは現状を打破できないで苦しんでいる。(インタビューはfakeかなとの疑念もあるものの)武器保有の権利、銃規制の問題はアメリカ人にとってはデリケートなことなのかも知れないなと感じた。