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TENET テネットのmaverickのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.6
2020年のクリストファー・ノーラン監督最新作。

新型コロナウイルスの影響がなければと悔やまれる本作。平常時なら世界中で新記録を更新しただろう。自分も劇場の大スクリーンで体感したかった。


圧倒的な映像体験。かつての『マトリックス』がそうであったように、斬新な映像表現が度肝を抜く。逆再生で進む世界。この逆再生自体はこれまでも表現方法としてあったが、それを丸ごと世界観に組み込み、それを驚異の映像技術でリアルに落とし込んでいるところが凄まじい。インパクトは絶大だ。

難解な内容なのも本作の特徴。時間の逆行というのが本作のテーマであるが、細部にまで徹底された設定はとても深みがあり、一度観ただけでその世界観を瞬時に把握するのは難しい。初見ではこの世界に触れ、体感することを楽しむのが本作の醍醐味。物語上で判明する事柄に驚き、徐々に保管されてゆく世界観がパズルのように脳内で埋まってゆく経緯をただ受け入れているだけで爽快。それを後で調べたり、他の人と共有することにも楽しみがある。難解さが作品の評価を下げるのではなく、その難解さを考察する部分にも魅力があり、ここは『新世紀エヴァンゲリオン』などにも共通する部分だ。

キャスティングも非常に魅力的だ。ジョン・デヴィッド・ワシントンと、ロバート・パティンソンのバディコンビというのが新鮮。ヒロインは透明感と存在感で魅了するエリザベス・デビッキ。この3人と、ノーランの作品性が抜群にマッチングしているのも印象的だった。ケネス・ブラナーの悪役も見事なハマり様。ノーラン作品の常連であるマイケル・ケインの登場も嬉しい。こういうキャスティングにもノーラン監督のこだわりを感じる。良い作品を生み出す人はキャスティングにもこだわっているということだ。


さすがノーラン監督、ハズレなしだ。構想に長い年月をかけた意欲作なのも伝わってきた。小難しいだけでなく、観る人を楽しませるエンタメ性もさすがだ。スケールの大きい作品。これは劇場向きだったな。自宅で鑑賞する際も、ブルーレイに大型テレビと、限りなく環境にはこだわりたい。
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