シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

空の青さを知る人よのシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)
3.6
超平和バスターズ三部作は全部劇場で見ています。
キャラクターはとても良いし、作画も悪くないが……。映画としてやりたいこと、狙いは分かる。だが、心の琴線に触れるには何かが少しずつ足りない。そんな感じ。
「ギルバート・グレイプ」って映画があるじゃないですか。この映画のあかねとあおいと同じ様に、ジョニー・デップ演じる兄が、こちらは知的障害のあるレオナルド・ディカプリオを守ってやっている。どん詰まりのように停滞し、ハンバーガーショップの副店長が高望みと思える(←こういう描写が、まさに映画としての巧さだと思うのよ。台詞で「出て行きたい」とか言わせるんじゃなくてね)ようなアメリカの田舎町で。
それと比較すると、田舎の閉塞感の描写が薄いし、ぶっちゃけ秩父は観光スポットの紹介もあって魅力的過ぎて、そこから出たい気持ちやしんどさが伝わってこない。子供の頃は西武線沿線に住んでたから、レッドアローで直ぐ(1時間20分)池袋に行けるやろ!と思ってしまう(笑)
あかねのしんどさにしてもそう。あかねが諦めたものは端的にはしんのがそうだけど、それ以外にもあったはずの個人としての夢は当然語らせるべきだったし、代わりに現在打ち込めている夢もきちんと語らせるべきだった。イベント不足なんだよな。「あおい攻略ノート」だってあんな所からムヒの代わりに無造作に発見されてしまってはいけない。あの場所にあった必然性というのが脚本の上でなければならない。あかねの危機だって、前振りもなく、あんなイベント起こされたって困るぜ。デウスエクスマキナじゃないかって思う。
決して悪い映画ではないが、何かが惜しく、どこかスムーズでなく、チグハグなのだ。自然だがドラマチックな見せ方というのは本当に難しいと思うのだが、もう少しだけ頑張って欲しかったのだ。
あとはバンド演奏をもっとちゃんと見せてほしかったな。前半のオーディション一発しか演奏シーンがないんだもの。音楽がテーマの映画なのに少し拍子抜けしてしまった。オーディション場面で、「海角七号 君想う、国境の南」をちょっと連想しちゃったんで、もっとそんな音楽と映画の魔法を見せてほしかった。

追記 ぎこちなさの理由が分かったと思う。これ、TVシリーズでやるべきアニメだったんだ。しんのの正体や行動制限、あかねの夢、寄せ書きの言葉、大物歌手のペンダント、ぜんぶ、アニメの一話としてエピソードを支える力があるギミックなりガジェットだったのにね。