ぴよまろ

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのぴよまろのレビュー・感想・評価

3.8
世界的ベストセラー小説の完結編翻訳のため、9人の他言語翻訳家が集められ、流出阻止のために地下シェルターでの生活を余儀無くされるが、本編の流出を脅迫するメッセージが届く、ミステリー物語。

監禁された9人の翻訳家の誰が犯人か、という展開というだけでもワクワクしますが、実はその先にあったのは、文学・創作への敬意という、二転三転しながら、一つの筋がしっかりと語られる物語でした。そして翻訳家たちの連携プレーが最高に楽しませられるというエンタメ要素も内包されているあたり、ミステリーものとしての期待をしっかり上回ってくるあたり、最高でした。

ミステリーとして完璧な構成なのはもちろん、「創作者ではない翻訳家」の葛藤と、それでも創作に関わるという強い意思が描かれているのが素敵。作中でも語られている通り、「翻訳家は透明人間」だけれでも、世界に作品を伝える役割を担っているという点で、敬意を払うべき存在というメッセージには共感しました。

ハリウッド系の三幕構成とは違い、フランス映画らしい余裕を感じさせる尺の使い方(それでも105分という最近の映画としては短めに収める)と、静かな爽快さの演出は、真なる意味でのオシャレでした。「オシャレなだけのフランス映画」という偏見は過去のものですね。

ミステリーものとしてしっかり楽しめて、創作への熱意が伝わってくる、上質なミステリーでした。
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