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9人の翻訳家 囚われたベストセラーのNMのレビュー・感想・評価

4.0
これはおすすめ。
『ダ・ヴィンチ・コード』等を手掛けたダン・ブラウンの小説より映画化。『インフェルノ』を出版する時作った環境がストーリーのもとだとか。
気軽に観ようとしたらきちんとストーリーを把握したくなって何度か巻き戻しながら鑑賞した。

フランス。
世界的ヒット中のオスカル著『デダリュス』その完結編である3巻を翻訳するために集められた9人の精鋭翻訳家。
多言語を一気に翻訳させ世界同時発売を目指す。

参加者の目的は金のため、著者のファンだから、と様々。
ただその労働条件は奇妙。
9人には十分な報酬の代わりに地下室での徹底した監禁生活と情報の遮断を強制した。原稿も20ページずつしか渡されない。

著者オスカル・ブラックは、大学教授を引退して隠遁生活を送っている。
その正体を知り出版を担当してきたのは、元教え子で編集者のエリック・アングストローム。彼がこの9人を集めた。

完全な環境に思えたが、アングストロームのもとに原稿を盗んだとのメールが届いた。
24時間以内に指定額を支払わなければ200ページが、最後には全ページ流出させるという金銭の要求。
そうなれば少なくとも定価で買う客は激減するだろう。これまでこの著作に大金を費やしてきたため会社が危うい。

アングストロームは野蛮な本性をむき出しにして必死に犯人を洗い出そうとする。
彼らの部屋を徹底的にガサ入れし、服を脱がせ、用心棒たちは銃で脅して従わせた。
仲良くなってきた9人だったが、お互いを疑い仲間割れ。

この脅迫計画に誰が関わったかは中盤から徐々に明かされていく。
捕まっているのは出版者アングストロームの方。
これがどういう経緯なのかを見ていくことになる。

最年少のアレックス。スケボーに乗った普通の少年だが、高い知能の持ち主でありオスカル・ブラックの大ファンでとにかく彼に会いたがっている。
自らの翻訳をネットに掲載して逮捕され、会いに来たアングストロームにその才能と情熱を見込まれ契約に至った。
そもそもこのシェルターに来る前から、彼がこの中の5人を説得して共謀して原稿(のコピー)を盗んであった。
アングストロームは盗まれたことに全く気づいてなかった。

アングストロームが犯人探しのさなかに、翻訳家の一人であるトゥクセンに君には全く才能がないしそれに気づいているはずだ、と本人が一番言われたくないことを言った。出版業界で働く人の中には本来なら小説家になりたかった人というのは少なくない。
ただどうやらそれはアングストローム自身もそうらしい。オスカル・ブラックに指摘され答えに窮していた。
トゥクセンは絶望し首を吊ってしまった。騒然とする9人、とりわけ5人。

そこへアレックスからの第二段脅迫メールがアングストロームに届く。
支払わなかったため次の200ページが流出した。ペナルティー額を20分以内に払わないなら最後まで流出させる。
入金されなければ自動的にネットに流出する仕組みにしてある。

アングストロームはヤケを起こし、止める方法を教えないと全員殺すと9人を脅した。
仕方なくアレックスは、遠隔操作でメールしたと白状。だがアングストロームはそのまま全員殺そうとした。そして無関係の一人が腹を撃たれた。
アレックスはロンドンの住所を教える代わりに救急車を呼ばせた。
しかし解除は間に合わず、急いで支払い処理をしたが結局時間切れ。救急と警察が到着しアングストロームは全てを失った。

……という経緯かと思われたが、全ては見せかけ。
真実は、そしてその本当の動機は。

戻ってこない大切なもの、取り戻すべき大切なもの。
「自分のものは自分で守れ」。それを実行してのけた物語。
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