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ロブスターのNMのネタバレレビュー・内容・結末

ロブスター(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2本ぐらい観たような気分。見応えたっぷり。面白かった。
尚、グロあり、動物死ぬ、人間死ぬ、閲覧注意。といっても設定が現実離れしているので怖さはそれほど心配なさそう。怖さが売りの作品ではない。不条理さ、不思議ワールド、シュールな世界観が好きな人におすすめ。

前半はおかしな設定とおかしな人々。理屈を超えた世界。ランティモスワールド初級編。
それを踏まえての後半は、状況を脱したかと思いきやむしろ余計にひどい生活で、結局大事なのは人間としての命より愛だったのかなと考えさせられた。
理屈のみで考えれば偽装結婚でもしていたほうがマシに思えるが、実際そういう状況になったら実はほとんどの人は危険を顧みず本能的に真実の愛のほうに飛びつくものなのでは。

正直全部理解できた気はしていない。
実は犬の事情は震えた。ということは薄情女が冒頭撃ち殺したロバも何らかの関係者だったのだろう。そして彼らが獲ったうさぎもか。

ジョンが脚の悪い共通点にこだわっていたのが印象的だった。ただの捻挫だと分かると残念がる。その心理を相手にも利用して鼻血を使った。
やがてデヴィットまで視力に執着した。我々も無意識なだけでパートナーにそんなにも共通点を求めているのだろうか。
片方が視力を失い共通点がなくなったあと、また新しく作ろうとする。これを観て今まで分からなかった『春琴抄』が少し理解できた気がする。二人とも見えなかったら不便じゃないかとか今後誰がサポートするんだとか、そういう問題じゃなかった。
共通点だけが繋ぐ関係というのがきっとあるのだ。

それと、カップル成立後、二人で解決できない問題が起きたら子役が派遣されるという謎のシステム。
ジョンカップルのもとに子役が来ていたのは、何かしら解決しがたい問題が起きたからと考えられる。そしてその活躍ぶりから既に二人を仲介済みとも思える。
デヴィットが殴り込んできた時思ったが、鼻血の女はすでに彼の真実などとっくに気づいていたのではないか。それほど驚いてもいないように見える。真実はともかく、今更共通点を壊されては困るだろう。
ジョンは最初から生き残る意欲が高かった。母の件もあっただろうし。強い生き物に食い殺されたくないとも言っていた。実は鼻血女ともそんな価値観のほうが強固な共通項だったのではないか。

一番憎たらしいのはラスト。2パターン取れるではないか。
まあ普通に考えれば実行したのだろう。彼らには新たに今後失われることのない永遠の共通点が必要だった。きっと二度と離れることはない。


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あらすじメモ

デヴィットは妻に別れを切り出され落胆。
悲しいし、即刻あのホテル行きになる。

犬のボブも連れてここにやってきた。兄も数年前ここに来た。
受付の部屋は趣味の良い設えで高級感が漂う。
これまでの交際関係や性趣向、食物アレルギー等々を淡々と聞かれる。
シングルルームを使えるのは45日間だけ、その後うまくいけばダブルに移れる。
つまりここはその期間内に恋人を見つけるための施設。

スタッフたちもみな高級そうな使用人の服装。仕事に徹している雰囲気。
私物は一切持ち込みできず、衣類は施設から提供される。
同室には同じく下着姿の男女が数人。一定以上の年齢層のようだ。

下着とぞうりで、与えられた個室に入る。しばしたたずむ。
広くはないが上質な家具。
幾枚かのシャツ、スーツ、下着など。そして麻酔銃とその矢。

窓の下を見る。
銃を手にした人々が並び、その前に捕獲され意識を失った独り身たちが道に倒れ、スタッフが結果を読み上げている。
どうやら1名撃つと1日滞在時間が伸びるシステムのよう。

部屋で休んでいると、支配人の女性が部屋に説明に来た。
ここで恋を見つけられなければ動物になる。
でもそれは悲しいことじゃない、動物になってもパートナーは探せるから、と。
心の準備をしておいてもらうために説明する役目らしい。
支配人は、失敗したらどの動物になるかと聞く。
自分に似ている動物を選ぶよう言われ、男はロブスターと答えた。
大抵の人は犬を選ぶから地球に犬が多く、人気のない動物は絶滅危惧になるらしい。

そして右手に手錠とベルトに南京錠をかけて去っていった。
初日はみなこれをされるようで、24時間後に外されるらしい。
ホテル内で自慰行為は禁止。
ただし毎日女性の使用人が興奮だけさせてくれる。勃起したら即終了。拒否も許されず、延長もできない。パートナー探しを促すためらしい。

朝食の時間。
食堂は独り身ゾーンとカップルゾーンに分かれている。カップルの彼らとは食堂以外で出くわさなかった。
独り身はそれぞれ小さなテーブルと一つの椅子のみ。カップルゾーンを見つめながら食べることになる。
デヴィットは近くの席に居合わせたジョンとロバートに声をかけてもらい、時々話す仲となった。

新しい入居者たちが皆の前でスピーチをする場。
同日入所した脚の悪いジョンが話す。
愛する妻を数日前に亡くした。彼女も脚が悪かったそう。
19歳のとき、父が別の女性に走り、母がこのホテルに入った。
母は失敗しオオカミに。母が送られた動物園に通ったが、どれが母なのか分からなかった。檻に飛び込むと2匹以外が襲いかかってきたという。その2匹のどちらかが母なんだと思う。
そういって彼はスピーチを終えた。

パーティの夜。支配人夫婦がバンドをバックにして冴えない歌を歌っている。
入所者はみな同じスーツとドレス。
デヴィットは立ち上がり、ある若い女性を踊りに誘った。
良さそうな人だったが、わかったことはとても鼻血を出しやすい体質だということぐらいで特に発展はなかった。
他の男性たちもそれぞれ女性を誘ったが進展はなし。

そのとき、けたたましいアラームが鳴り響く。
狩りの時間。
スーツとドレスのままみな急いで黒いブルゾンを羽織りワゴン車に乗る。
森へつくと駆け回り、互いを撃ち合う。
結果、デヴィットの滞在日数に変化はなかった。

朝食のとき、ロバートの席を支配人たちが囲んだ。
自慰行為をしていることがバレたらしい。ホテルでは禁止行為。
その場で右手をトースターに入れられ、叫び声を上げた。
みなは食事を続ける。

狩りのバスの途中、隣に座ったビスケット好きの女性に口説かれたが趣味じゃないので応じなかった。
彼女はここ数日捕獲がなく焦っているらしい。パートナーが見つからなければ近いうちに窓から身を投げるつもりだと言う。

ジョンがプールで、あのよく鼻血を出す若い女性に声をかけた。
ジョンは彼女の目をぬすみ、プールサイドに思い切り眉間を打ち付ける。
鼻血が出て話がはずみ、私も困ってるのよ、と見事カップルとなった。
デヴィットはそれを見ていたが黙っていた。
みなの前で祝福される。
この後はスタッフたちの監視のもとダブルルームで2週間、さらにヨットの旅で2週間過ごせれば町に戻れるという。

デヴィットは残り7日となった。
髪の長い女性と話す。デヴィットのタイプではない。鼻血の女性の親友。
その彼女は今日が最終日だと言う。最終日の行動は自由。
親友が来てお別れの手紙を読みだしたが、自分はカップルとなりこれから動物となる親友に対してあまりに稚拙で空虚だったため途中で遮られた。
映画を観て過ごしたようだ。

ビスケット好きな女性が宣言通り身を投げた。ただ即死ではなく、苦しそうな声を上げている。
デヴィットは別の女性に声をかけた。あの女うるさいから早く死んでほしい、と。
その女性は特殊な人で情愛が全く無く、笑うのは狩りのときだけ、捕獲数が断トツでどんどん滞在日数を伸ばし続けている。
デヴィットが冷酷な態度を見せたので彼女は気に入り、カップル成立。

ダブルルームへ移った。
特に感情もなく性行為をする2人。キスはしない。

朝起きると、女性は無表情で告白した。
寝てる間にあなたのお兄さんを痛めつけて殺した、苦しんでうめいていたと。弱々しいうめき声を真似してみせた。
別に構わない、とだけ返すデヴィット。
バスルームではボブが血まみれになっていた。
デヴィットは別の話をしようとしたが、こらえきれずついに泣き出してしまう。冷酷の仮面は剥がれてしまった。

薄情女は怒り、性格を偽ってカップルになったことを咎めた。
誰もなりたがらない動物にしてもらう、と支配人の部屋までに引っ張られていく。
途中、隙を突いて逃げ出す。
女性スタッフの協力を得て後ろから麻酔銃で撃った。なぜ協力してくれたのかは分からない。
薄情女を、動物に変えられるという部屋まで運んだ。

デヴィットはホテルを抜け出し宛もなく深い森をさまよう。
何日か過ごすと、森の住人たちと出会った。
リーダーらしき女性から、好きなだけ居ていいと言われる。
ここは逆に独身者だけの集団。恋愛もセックスも禁止。ナンパも一緒にダンスすることも。
男性の一人はその掟を犯したらしく、唇を深く切られる罰を受けていた。
罰は軽重あり、身体の一部を切断するものも多いらしい。
彼らは森で走ったり逃げたりする訓練をしている。
住人のうち一人の若い女性がデヴィットを見るなり興味を持った。デヴィットと同じく近視らしい。

デヴィットが森にいると、狩り中のロバートに見つかってしまう。
残り2日なので必死のロバートが撃とうとした瞬間、近視の女性が助けてくれて無事逃げることができた。

リーダーの女性はホテルの女性と内通していた。デヴィットの脱走を助けてくれた人。
情報や物資を運んでもらっている。
女性は仕方なく愛のないパートナーと暮らしをしているのでコミューンに協力しているようだ。
彼らは時々家族のふりをして町へ買い物にも行くし、家族のふりをしてそれぞれの実家へも顔を見せに行く。

ある夜、森の人々はホテルを襲撃。
カップルルームに侵入し、一人ずつ問い詰める。
森の独身者コミューンだと悟った彼らは、自分は独りで生きていけますと宣言させる。
銃でパートナーを撃たせ、リーダーは満足げな笑みを浮かべる。
弾は入れていないが、その後このカップルが続けていけるとは思えない。

近視の女が他の男にうさぎをもらっていた。
デヴィットは嫉妬し、俺が取ってくるから他のやつからもらうなと言った。

やがて2人は抱き合いキス。
バレたらどうなるか分からない。オリジナルのハンドサインを作って会話した。
夫婦のふりをしている間だけは堂々といちゃつくことができた。
その様子にリーダーは不満げ。

2人は森を抜け出すことに。狩りの最中に姿を消して捕獲されたと思わせる作戦。
だが近視女の落とした日記がリーダーに見つかった。愛をしたためてある。

リーダーはデヴィットに、ここでは自分の墓穴は自分で掘っておくようにと前から言っていた。
先延ばしにしていたので呼び出してやらせてた。穴に入って土をかぶるシミュレーションを命じておいた。

次にリーダーは近視の女を手術だと言って眼科に連れ出す。
女は両目とも視力を奪われた。

デヴィットと盲目の女がおちあう。
女は失明したこと、リーダーにやられたことを話す。
二人の行動はかなり制限されてしまったが、何か方法を探そうと励まし合う。

デヴィットは彼女に改めて提案をした。
決行は明日。
ハンドサインを言葉で説明して説明した。デヴィットの覚悟を聞いた女は承諾。
一人でいたリーダーを奇襲、縛り上げて犬に襲わせた。
スーツに着替え、二人で手を取り走り出す。

町に着き、お互いの身体に泥が着いていないことを入念に確認する。
泥が警察に見つかると脱走した独身者であることが疑われてしまう。
二人でレストランに行き、まずカトラリーを頼んだデヴィット。
女が付き添うかと尋ねるが一人でやってくると言う。
ステーキナイフをトイレに入ったデヴィットは、ナイフを眼球に向けた。
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