ラウぺ

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのラウぺのレビュー・感想・評価

3.8
世界的ベストセラー「デダリュス」の最終巻が完成し、世界同時発売に向け9人の翻訳家が集められる。洋館の地下室に閉じ込められ外界との接触を一切断つことで流出を防ぐためだったが、出版社の社長の元に「最初の10ページを流出させた。残りを流出させたくなければカネを払え」との脅迫メールが届く・・・

二転三転するストーリー、予想もしなかった展開と王道を行くミステリー、トリッキーな展開がある割には置いてけぼりを食らう心配のない明快な物語運びには大いに感心します。
物語の最初は洋館の地下室に限定された展開ですが、徐々に舞台がズームアウトしていくように異なる舞台と時間軸を行き来し、トリミングされていた事件の外郭部が可視化するにつれ、事件の様相がそれまでとまるで違った展開を見せるところは目新しく、爽快でもあります。

ミステリー的展開を最大限に生かすことに主眼を置いて脚本が練られているため、無駄な要素はまったく感じないのですが、その一方で各キャラクターの人物像や描き込みはあっさり目で、少々食い足りないと感じるところもあります。
また、登場人物のなかでもオルガ・キュリレンコ一人が突出して目立っているために、各キャラクターの重みづけにアンバランスなところがあるのですが、せめてあと何人かは重要なキャラクターにビッグネームな俳優が居た方がバランスが良かったと思います。
とはいえ、ハリウッドのブロックバスター作品ではない本作にそれを求めるのは、ないものねだりというべきかもしれません。

微妙に惜しいところはあるものの、なかなか良質なミステリーでした。
ラウぺ

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