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わたしは光をにぎっているのmuraのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.2
『四月の永い夢』の中川龍太郎か…ほどの情報だけで見に行ったが、あらわれたのは「呑んべ横丁」! 一度訪れただけなのにものすごく印象的な立石が舞台だとわかり興奮。すぐに引き込まれた。

澪は湖のほとりで宿を営む祖母と暮らす。ところが祖母が高齢となり、いよいよ宿を閉めることに。そこで澪は、東京に出て働くことを決める。父親の知人が営む銭湯に間借りし、仕事を探すが、結局はその銭湯で働くことになる。銭湯に集う人たちとしだいに交流を深め、働くことに心地よさを感じてきた矢先、再開発のために銭湯を閉じなければならないことがわかる…

ここでもテーマとなるのが「居場所」の問題。最近この「居場所」について問う映画が多いような。ただそのなかでこの映画が特異なのは、「居場所」を見つけることだけでなく失うことにもふれるところ。

「居場所」を失った喪失感にも立ち向かうまでに成長した主人公に好感がもてる。失った「居場所」である祖母の言葉がそれを助けるという展開にも。「見る目と聞く耳があれば大丈夫」「目の前のできることから1つずつ、できそうなことから」、そして「わたしは光を握っている」。

中川作品は映像が美しい。それは自然風景などではなく、すぐそばにある何気ない風景。それが心象風景と相まって。
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