ひでやん

パラサイト 半地下の家族のひでやんのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
卓越した演出力で描く韓国の格差社会。

軽快なテンポで進む前半は痛快。信頼を勝ち取りながら、次々とパク家に潜り込む寄生大作戦は上手く行き過ぎではあるが、欲にまみれた俗世間のトゲも毒も知らぬ金持ち奥様の騙されっぷりが可笑しい。

キム一家の寄生が完了すると、雨の日の訪問者によってコメディからサスペンスに転じる。そして無計画なラストへと雪崩れ込む起承転結の構成は見事。展開が予測不能でラストがどうなるのか分からなかった。

身を潜めたキム一家のそばで、肌をまさぐる夫婦の声。「早く終われよ」とテーブルの下に感情移入しつつ、「時計回り」の注文に笑ってしまった。家政婦がいないとなんにも出来ないのに、そうゆうとこはちゃんと言う奥様のキャラが最高。

豪華なリビングで好き放題やったキム一家。その刹那の時間が人生で一番幸せな時間だったんだろうな。豪華なリビングから洪水の半地下へ移動する落差。2階の風呂で快適な湯に浸かったギジョンが、便所に座り不快な水に浸かった落差。高台の豪邸から坂を下り、階段を下り、下へ下へと向かうシーンは格差が強調される描写で印象的。真っ逆さまに落ちて…我が家。

見上げたり見下ろしたりするカメラワークが効果的で素晴らしい。上下や明暗による対比、伏線や皮肉、複数のジャンルの融合は見事。インディアンの格好をするパク家の息子ダソンは「侵略される先住民」を意味し、いち早くキム家の匂いに気付いた事で「家を守る者」となる。そして、パーティーのサプライズでインディアンの格好をさせられたキム家の父は、鑑賞後に振り返ると「先住民のバトンタッチ」に思えた。

キム家が豪邸を乗っ取り、パク家が半地下に追いやられる逆転劇をどこかで期待していたが、さすがにそれは無理か。立場が逆転できるとしたらトランプの大富豪くらい。現実はジョーカーや絵札なんて永遠に回ってこなくてずっと大貧民。日本よりも深刻な格差に驚いたが、国ではなく世界全体で見ても、たった数十人の富裕層が世界の半分の富を持っているというからエグい。

富裕層をギャフンと言わせたくなるが、根っからの悪人がいないので血が流れるのはどうにも後味が悪い。面白かったけど。

例えば、パク家の視点で展開し、家庭教師、運転手、家政婦が次々と代わるが皆死んでいく。その後、パク一家は怪奇現象や幽霊に怯え、家を売り払う。そこで時間が遡り、半地下家族によるパラサイト計画という種明かしがされる。キム一家は死や霊の演出で住人を追い出し、そこに住み着く。新たな住人がやって来ると、青ざめた幽霊のメイクをしながら「さて、驚かせますか」という結末も面白いな、なんてダソンのトラウマから想像した。
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