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パラサイト 半地下の家族のOtoのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.1
説教は笑いに包め,を徹底している.コメディですよ〜と振ってるから多少強引な展開があっても観ていられる.展開は意外とオーソドックスなんだけど,パンティとか結核みたいな飛躍があって,そこがむしろオリジナリティとして機能してる.
(ネタバレになりそうな細かい伏線考察はコメント欄にするけど...特別メッセージが「ネタバレやめてくれ」だけってのはどうかと思うよ)

伏線も見事で”コメディとミステリーは紙一重”と再認識した.あとコメディは「次の展開に観客が半分気づいててお決まりを待っている」というのが大事かもと,ミルクボーイの漫才と同じ発見があった.演技の演技に超笑った...

同じテーマを『万引き家族』『US』等,世界中で巨匠が描き続けているけど,「みんなが目を背けてる貧困は本当に紙一重のところにあるよ」というのを一番切に感じたのはこの映画かもしれない.「半」地下という副題が上手なのと,「悪役のいない悲劇」がリアル.
雨は『天気の子』だな〜と思ったけど,あの雨はどうやって撮ったんだろう...VFX?全体的にメイキングが観てみたい作品.

撮影も良い.イマジナリーライン壊したり,ステディで接写で追いつつフレアを入れたり,撮影がいろいろ遊んでて面白い.対話を顔半分のOTSで撮るというの真似してみたい.
あとは1stカットとLastカットのトランジションの対応が本当に見事で鳥肌がたった.いわば回帰の映画なんだけど「おい!おとぎ話じゃねえぞ!」と指をさされて終わった気がした.その前の綺麗なオチも感動的だったけど,そこで終わらないのがさすが韓国映画で目的がはっきりしている.まぁでも振り返ればあれがやりたくてあそこまでの事件を起こしたのだろうと思う.

「拭い去れない貧困」のモチーフとして「臭い」を用いたところにもいたく感動した.どれだけ貧困から目を逸らそうとしても臭いは伝わる.
テーブルの下に寄生虫たちを置いた上で,芸術家気取りの子供が庭でテントを張って,ソファでセックスが始まるという動きを自然に作り上げてる時点で見事だけど,そこでの夫婦の悪気はないけど残酷で攻撃的な会話がすごく刺さった.
「俺馴染んでるかな」のシーンでも娘さんにクサいって指摘されるのではないかというドキドキがあって,すごく感情移入した.馴染めてない感覚というのはよく感じる.

富裕側の奥さん,大作にはほとんど出てこなかったみたいだけど,まじでいるよな〜と思わせるキャスティングで見事.オーバーな演技が上手く映画とマッチしている.英語混じりなのも良かった.

深田監督が英字幕をつけるだけで視聴者が何十倍になるという話をしていたけど,まじでクレジットは英語で作るべきだな〜と思った.先行上映で三ヶ日なのに劇場が満員でパルムドールはさすがだと感じたし,久しぶりにエンタメの最上位にいる「創作意欲を刺激する作品」に近いものと出会った気がする.本当に最近までこの映画の劣化版みたいなシナリオを書いていたんだけど,こんな深みも意外性も全く出せていないのでまだまだだな〜と思った.(2020年1本目)

インタビューメモ
・2013年に発想.テーマよりも単純に貧乏人の潜入が面白いと思ってシナリオを書いているうちに発展していった
・気が散るハリウッドよりも安心感楽,エネルギーが分散しない規模 これからサイズが小さいな状況だけど豊かなものを撮りたい
・CGも爆発もないので俳優の繊細でパワフルな顔と芝居に集中
・ソンガンホ:ノープランでどうにでもなれという気持ちで臨んだ
・ストーリーボードを正確に書いてチームと緊密に話し合って細かく指示する,演技は枠組み/ステージだけを作って自由に演じさせて口出しし過ぎない.タイミング
・シナリオを読んだ時点で正六面体のような立体的な変わった映画だと思って驚いた
・高低差と雨が社会構造を反映(天国と地獄).空間設定は革新で,雨の中を下降していく,豊かな水が貧しいものに,逆流はしない.止められない怖くて悲しい流れ.
・難しい撮影は洪水:プール水槽の中にセットを作った,町並み全体がセット,撮影終盤にスタッフも水着を着て水中で撮影した,監督自身が強烈な思いを感じる場面だった.制作会社とキャリアのおかげ
・キムギヨン『下女』の階段,洋風家屋ができてきた1960年という時代の中流上流の象徴なので事件が起こる場所
・joker,us,burning,万引き家族と似てると言われるが,スノーピアサーの車両も.1980年代のフランス漫画が元なので昔からあるテーマ.資本主義の宿命だし,創作者は生きる時代を反映するのが当然なので自然
・においは画面から伝わらないけど,役者が表現すれば伝わる,自分が臭いのではという不安な顔づくりがうまかった
・自分でやりたくないから仕事で貧しい人を呼び寄せた.線を引いても臭いは超える.自身が作った状況
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