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パラサイト 半地下の家族のCHACOのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5
【いま僕たちは世界最高の映画クリエイターに試されている】

社会構成の最小単位である「家族」。
思えば今回のアカデミー賞各部門ノミネート作のうち、自分がここ数日連続で触れた作品、
『パラサイト』『ジョジョ・ラビット』『ナイブズ・アウト』と
奇しくも、この「家族」単位でのストーリーテリングが光る名作続きでした。

そしてもう一つ、
三作品に共通しているのは「分断」と「差別」。
貧富、格差という分断。
人と人ならざるに分け隔ててしまう無意識。
最小の社会構成単位にまで、この分断が根深く食い込んでいることを思い知る数日間でした。
(なんか最近のレビュー同じこと書いてる気が。僕は僕で偏向してますね笑)



決定的なネタバレは避けた上で
本作『パラサイト』で僕が感動した点は2つ。

その①
上下に流れるカメラワークとフッと切り替えられるプレイヤー視点。そして奥行のゾワッとさ。

坂道を上る。坂道を下る。このプレイヤー達の行動と、役がここから切り替わりますよ・戻りますよ、という変換を視覚的に見せる絵づくりでまず「すごい」と心で一言。
そして、ここから事が起こりますよ〜、はいここでハプニング発生!というタイミングでは、まさに自分も家族と同じ視点(一人称)にグッと揺り戻され、気づくと家族の横に立っている。同時進行性が高まる。
このガチャガチャとしそうなカメラワークが、滞りなく気持ちよく動く点で二度目の「すごい」
さらに、奥行きを感じさせるシーンが見えた時の不穏さ。これが三度目の「すごい」点。たとえば半地下の家族の家。狭い家のリビングからドアがスッと奥に伸びているのが何度となく映る。この半地下リビングはまさに家族の依代。そこから伸びたドアの外・下界は、文字通り彼らに差別を降りかける別世界への入口だと、あのじっとりした奥行きが感じさせていた気がしてならない。
もしくはパラサイトされる富豪のリビング。たとえば玄関につながる階段や、キッチン側への奥行き。スタイリッシュなお洒落ハウスなのに、なぜかちょっと冒頭から暗さや不穏さを感じさせる。なんていうんでしょうねあの感じ。田舎のおばあちゃんの家でトイレ行くの怖い感じ?笑
これは本当に、効果的だなと感じました。


その②
登場人物全員憎めない、だからこそこちらの心情が抉られる。

登場人物全員が絶妙なバランス感で愛らしい。絶対こいつダメでしょう!とは思えない人ばかり。
これは、なんというかリアルな現実を生きてる人間そのもののように思えます。

たとえば
多様性、うん積極的に認めるよ!
職業に貴賎とかないよね。全然ない。
いまこの生活にすっごく満足です!

そういう気持ちもあれば、数秒後には、

やっぱり自分とあいつ、なんか違うんだよな〜
ああいう仕事したくないな〜本音言うとな〜
嗚呼…もっと良い暮らししたいな〜

と思っていたりする。
そういう人1人が持っているアンビバレントさみたいなものを切り分けていくと、ああいうキャラ達ができるような、そんな感じがするんです。
だから共感できる。共感してしまう。
観賞後「ズドン」とくる一因は、この登場人物全員分の感情・視点が分かってしまうからなのではないでしょうか。
主人公誰かひとりの感情でなく、全員分がグッと乗っかってくるからなのでは?
そんな風に考えざるを得ませんでした。



今年、僕たち鑑賞者は
映画を通じて、様々な監督、様々なクリエイター達から試されているのかもしれません。
「あなたはこの映画を観てどう感じていますか?」と。そして、
「分断された世界に対して、この部屋を出たらまず何を行いますか?」と。


そうだとしたら重い宿題です。


それならば、まず僕は
大それた計画を立てるでもなく
全くの無計画で何かやる!と気合いだけでぶつかるでもなく、
この映画を観ていない周囲の人に
オススメするところからスタートしようかな。
そう思います。シンプルに。


制作に関わった皆様
アカデミー作品賞含む4冠、
本当におめでとうございます!
次回作も楽しみにしています!
CHACO

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