あんがすざろっく

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 完全版のあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

4.2
一昨日のネットニュースで、俳優のバート・ヤングの訃報を知りました。
83歳だったそうです。


バート・ヤング、ご存知ですか。
「ロッキー」シリーズで、主人公ロッキーの義兄にして悪友、ポーリーを演じ続けてきた方です。
シリーズ全てに出演し、ぶっきらぼうな物言いで時にロッキーを励まし(どちらかというと金を無心したり仕事を斡旋してもらったり)、救いようのない体たらくを表現しながら、それでいて憎めない人間臭いキャラクターを演じていました。

以前「ロッキー」マラソンのレビューをあげた時何度も書かせてもらいましたが、僕はあのシリーズで一番大好きだったのは、ポーリーなんです。

あんなむちゃくちゃなキャラクターを、あんなに愛情深く演じられるバート・ヤング。
彼の出演作はロッキーシリーズぐらいしか記憶にないんですが、それでも絶対忘れられない印象的な俳優さんでした。

彼への追悼の意を込めて出演作をレビューしようと思いましたが、ロッキーシリーズは全てレビューをあげているし。

ここは、以前に見たことがあるけど、その長尺でなかなか再鑑賞まで腰の上がらなかった本作をレビューします。

どちらかと言うと、セルジオ・レオーネ監督作にして遺作、ロバート・デ・ニーロ主演、音楽エンニオ・モリコーネで有名な作品ですが(それから激カワジェニファー・コネリー😍)、バート・ヤングも出演しているんです。
出演シーンをあまり覚えていなかったな。



むか〜しむかしのアメリカで…。



時は1920年代。
ニューヨークのユダヤ人街で盗みをして暮らしていたヌードルスら少年4人。ある日街に引っ越してきたマックスと知り合い、やがて仲間に。
禁酒法下のアメリカで、ヌードルス達は密造酒絡みの仕事で次第に力をつけていく。
そんな中、彼らの存在を疎ましく思っていた男により、仲間が殺されてしまい…。


簡単にストーリーの概略を書きましたが、作品の内容はこんなに単純ではありません。
なんせヌードルス達の少年期から壮年期までを、時系列をバラバラにして描かれています。
しかも3時間49分😱
20代ぐらいの時に見たのがどのバージョンだかは覚えてないんですけど、最初のアメリカ劇場公開版は随分酷評されたようですね。
製作会社が分かりやすいように、勝手に時系列を並べ直したり、カットしたり、しかもモリコーネの音楽もカットしたりで、もう別物らしいですよ。
レオーネ監督もかなり落胆したようで(そりゃそうだよ)、自らの手で完全版を作りあげて公開したところ、大絶賛を浴びたギャング映画の傑作です。ブレランみたいだね。
(酷評された劇場版は、アメリカだけで公開されたものだそうで、日本ではオリジナルが公開されて絶賛されたそうです)

やはりその長さは、20代の頃に見ると冗長な気がして、全然記憶に残ってませんでした(コネリーの可愛さだけ覚えてる🥰)。

今回見直して、その長さが全然苦にならなかった‼️
酔いしれてしまいました。
多分「ウェスタン」を見て、そのゆったりとした展開と絵作りにこそ、レオーネ監督の真髄があるのだろうと、自分で感じられるようになったからです。
情感溢れる作風は、作品の中に流れる時間に身を委ねることができて、これを劇場で観たら、もう堪らないものがあるだろうな。


とは言え作品自体はやはり難しく、それはパズルのような時系列故ではなく、これはどんな意味があるのだろうと思わせるシーンが、いくつもあったからです。
一番はラストシーンな訳ですけど、色々考察を読んでみて、見た人それぞれに様々な解釈ができる作品だということが分かりました。

そう考えると、僕の中でも僕なりのストーリーが出来上がって、これでいいんだな、と思えてきます。

俳優陣は、デ・ニーロを筆頭に、今回はマックス役のジェームズ・ウッズが印象に残りました。
ヌードルスもマックスも、お互い持っていないものがあって、特にマックスは、ヌードルスに嫉妬していたんだろうなぁと改めて思いました。
人が羨む程に登り詰めたのに、それでも本当に手に入れられなかったもの。
ヌードルスもまた、望むものを手に入れられなかった。
悲しいですよね…

実は他キャストも豪華だったんです。
ジョー・ペシがマフィアのボスをさすがの貫禄で演じています。
出演シーンは短いし、エレベーター前のシーンで彼が登場した意味が分からなかったんですが、考察を読んで、なるほどと唸らされました。
少年期のヌードルス達をつけ狙ったバグジーは、ジェームズ・ルッソが演じていました。
どこかで見たことあると思ったよ。

警察署長にはダニー・アイエロ。
この署長のエピソードが、僕にはイマイチピンと来なかったんですけどね…

トリート・ウィリアムズも出演していましたが、この方も亡くなられていたんですね。
知らなかったです😢



と、長尺の中に多くの人々の思惑が入り乱れ、ここを整理するのが大変だったかな。

レオーネ監督はビジュアルにも拘りがあるようで、ジャケットなどにも多く使われているマンハッタン橋の前を少年達が歩くシーンや、ヌードルスが収監される際に仲間達が見守るシーンの、背景の大きなレンガ壁など、印象的な場面も多いです。
あまり詳しくは分からないけど、構図が素晴らしいのかな。


でもやっぱり一番は、音楽ですねぇ。
マエストロ・モリコーネによるスコアが、本当に抒情的で、ずっと頭から離れなくなります。
デボラのテーマ、アマポーラ、コックアイが吹いていたメロディも美しくて、これは昔にサントラ買っておいて良かった🎵
久しぶりにCD引っ張りだして聞こうと思います。

ジャンルが違うんだけど、僕「スタンド・バイ・ミー」ってあんまり印象に残ってなくて、本作のように大人になって見返したら、やっぱり良い作品だなぁと思えるようになるのかな…

色々と思うところもあって、こちらもコメントでネタバレします。


結果的にパート・ヤングは少ししか出演していなかったのですが、それでも話の展開を握るキーマンではありました。
やっぱりパート・ヤングは、僕の中ではポーリーなんだな。
ヌードルスの中で、マックスは若かった頃のマックスのままだったのと同じように。
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