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罪の声のdeenityのレビュー・感想・評価

罪の声(2020年製作の映画)
3.9
1984年に実際に起きた「グリコ・森永事件」を基に作られたという本作。この時まだ自分は生まれてないわけですが、さすがに有名すぎて名前くらいはわかりますし、概要も多少は知っていたので結構関心を持って見られました。

主人公は雑誌記者の小栗旬と事件の脅迫テープを発見してしまったテーラーの星野源。
だから事件そのものに関する説明は必要最低限ですし、その真相を探っていくような作りになっているので、前情報として基にした事件のことくらいは知っておいた方が楽しめるかもしれません。

ただ、こういう作品の作りってどうしても淡々と事件に関する情報を集めていくって感じなので、展開としては結構面白くて飽きずに見られるんですけど、説明のための描写って多くなりがちですよね。池井戸さんの原作とかだと結構こういう感じのドラマみたいな作品って多い気がしますが、原作者は違うんですね。でもあんな感じの作品が好きなら楽しめると思いますし、ドラマっぽさが好かない人には相性が悪いかと思います。

事件の真相に関わることはネタバレになるので避けるとして、脅迫テープの声一つで大きく人生を左右させてしまうかもしれないという罪なき弱者に対して焦点が当てられていましたね。この点は時代がどうこうで風化されるものでもないので普遍的なものだと思います。
一方でやはり映画というメディアを通して伝えるメッセージとしてはかなりストレート過ぎますよね。そういう意味でも小栗くんはかなりキーパーソンだったと思うのですが、いささかセリフが直球過ぎてドラマ的だったかなと。見てたらわかるようなことを改めて言葉にすることってもちろん大事ではあるのですが、やっぱりメッセージ力としては弱くなりますよね。2時間でまとめたドラマ風にまとめてもいけませんし、とはいえ説明が不足すると空疎な出来になりますし。テーマがわかるだけにラストの望ちゃんのエピソードを描いたんだと思いますけど、やはり蛇足感は否めませんし。
それこそ池井戸潤原作の『七つの会議』とかも見ましたけど、作中で語れなかったことをエンドロールでねじ込むというウルトラCを使ってましたよね。ちょっと強引だとは思いますけど、あっちは良くてこっちはちょっと惜しいって感じたのも事実でして。作中で入れ込むべきものはやはり作中に入れ込んで完結させるべきだと思っているので、本作のメッセージはそれとは違うプラスアルファ的な物でもないですし、はっきりと語らせるのではない工夫は欲しかったですかね。まあこの手のジャンルの難しいところかなとも思います。

とはいえ作品としては面白いですし、というよりも関心を持っている人が多いのが本作の面白みの一つですかね。だから事件の背景とかを知りつつ楽しめるのは魅力だと思います。あとは小栗旬の演技がいい味出してます。
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