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パブリック 図書館の奇跡のOotzcaのレビュー・感想・評価

パブリック 図書館の奇跡(2018年製作の映画)
4.2
地味で割りと静かな映画ながらかなり力強いメッセージを放つ良作

新型コロナウイルス流行以降、随分と久し振りの映画館での映画鑑賞

大寒波に見舞われたシンシナティの公共図書館をホームレスが占拠して事件が起きるという話

民衆が声を上げることの重要性についてをユーモアを交え描きながら、民主主義とは何か、公共とは何か、法とは何か、正義とは何かを問う、社会派のヒューマンドラマ

民衆が団結して権力に立ち向かう時、行き着く先は暴力しかないのか?

民衆が怒りを爆発させた時、それを収集させる術は暴力しかないのか?

法律は誰を守る為に作られ、この世に絶対的な正義など存在するのか?

それらを様々な隠喩と軽いユーモアを通して、重くなり過ぎないように丁寧に作られた作品

コロナ禍、BLACK LIVES MATTER、など現在の世相をも図らずも映し出し、トランプ政権下における格差拡大、地球温暖化を痛烈に批判している

また一度、この新資本主義経済(グローバリズム以降)のシステムからこぼれ落ちてしまった人達は、再度、這い上がってやり直すのが難しいという現実や、アメリカ合衆国でのホームレスに対する扱いも読み取ることが出来る

実際にはかなりシリアスで重いテーマを題材にしながら、散りばめられたユーモアと絶妙に軽い脚本で、ギリギリのバランスでエンタメに仕上げたのはお見事

ラストのアイディアもなるほどと納得のエンディング

ただし、色々と多種多様な社会問題をテーマに挙げながら、全てについては結論づけられてはおらず、そこでやや散漫になってしまった印象は受けた

でも、「Make Some Noise!(声をあげろ!)」という弱き者達のあまりに力強い声には、グッとくるし、ここ日本での民衆の政治や社会問題に対するスタンスを、非常に考えさせられた

昔、ブルース・スプリングスティーンが『ゴースト・オブ・トム・ジョード』というアルバムを発表した時に影響を受けて一度読んだきりの、スタインベック著『怒りの葡萄』を再読しなくては、と思いつつ劇場を出ました

いい映画です
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