アタフ

ファブリックのアタフのレビュー・感想・評価

ファブリック(2018年製作の映画)
4.3
着たら呪われる、呪いのドレス系映画(そんなジャンルがあるのかは知りませんが)

この映画ずっと前から見たかったんですよね~~
予告編を見たときから惹かれていたんですが、どうにも日本公開はされておらず、配信やレンタルもされていないとなると見る手段がなく、長いことお預け状態でしたが、ついに日本公開(ヒューマントラストシネマ渋谷の未体験のゾーンにて)ときたもんで、wkwkしながら鑑賞。

まず、ピーター・ストリックランド監督の作品は『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』のみ鑑賞したことがありますが、またこれが好みの映画でして、音響効果製作所という閉ざされた空間の中で繰り広げられる、奇天烈天烈な映画製作。叫び声が響き渡り、カオスというかなんというか、ともかく、音にこだわった変態的でとても好物な映画でした。

そしてこの『ファブリック(原題:In Fabric)』はというと、ホラー要素の強いデヴィッド・リンチ映画ってな感じ??
いや、それよりかはコミカルでもあるかな。このピーター・ストリックランドという監督はレトロな小物やギミックが好きなのかもしれない。『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』でも映写機や録音機、フィルムなどが強調して演出されていたが、今作では、マネキンやブラウン管テレビ、洗濯機など、その辺のレトロな設置物に監督のこだわりを感じます。
また、特筆すべきは、意味不明または異常な映像の数々。婦人服店のテレビCMの異常な映像っぷりがたまらない。長時間見ていると洗脳されそうな音と映像、引き寄せる手、くどいほど強調されるsaleの文字、不気味だ…だが、むっちゃ好きね…こういう映像。
洗濯機が暴走しながらぶっ壊れるシーンはもはやギャグで普通に笑えし、夢の出産シーンは悪夢的。全体的に悪夢的なシーンが多く、開けた場所でのシーンもほとんどないため、閉ざされた箱庭的な空間内での悪夢と言った印象を受ける。あと、気になるのは音ですよね、なんなんですかねあのギョワァァン(擬音語化できない)みたいなSEは…??ちょっと癖になります。

ストーリーとしては着たら死んでしまう呪いの赤いドレスをめぐるお話。前半ではシングルマザーの黒人のお母さん、後半は若い夫婦がそのドレスの被害に遭うのですが、それだけなら普通のホラーになりそうなところを、上述したような奇妙な演出や意味不明なシーンで演出してしまったため、とてつもなく不思議な映画が出来上がってしまっている。
コーエン兄弟の『バートン・フィンク』とかデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』とか、あとは何だろう園子温の『奇妙なサーカス』とか好きな人は気に入るかもしれない。

ある種のジャンル映画を、作家性の強い監督が演出した結果、意味不明なものが出来上がった。そのような映画ではあるが、そんな個性の強い映画は大好きだし、デヴィッド・リンチ、ニコラス・ウェンディングレフン、ギャスパー・ノエなどと同様な強烈な個性をこの監督から感じるので、今後もどんどん意味不明な作品を作っていってほしいし、私も追っていきたい。

ただ日本公開をしてくれるかは微妙。配給会社さんたのんます。
アタフ

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