秋日和

7月の物語の秋日和のレビュー・感想・評価

7月の物語(2017年製作の映画)
4.0
映画の中に、登場人物の戸惑いや迷いを感じるとときめいてしまう。例えば『未来よ、こんにちは』で忌まわしき花をゴミ箱に捨てるときのイザベル・ユペール。例えば『カンウォンドの恋』で部屋を抜け出す際の、一瞬の動きの変化。怖くて銃の引き金を引けないとも、緊張してデートに誘えないとも違う、物語から離れた場所に存在するあの細やかな波のような揺らぎ。どうしたって魅力的に思えてしまう。
夏のとある1日を二回切り取ったこの映画の中にも、登場人物の明らかな迷いが描かれていた。それは、男女四人で楽しく酒を酌み交わした後に起こった諍いがきっかけとなる。テーブルに座って、安っぽいコップにワインを注いで飲んで、笑って踊っていたのに、三人はその場を離れ、主人公とおぼしき女の子だけがその場に残る。少しだけ悪者扱いされた怒りと、虚しさが入り交じったとき、彼女は思わずコップを手に取り投げようとする。けれど彼女は投げたりなんてしない。学生寮の共同スペースを汚すなんて愚かな真似はしないのだ。
映画のなかで登場人物たちが、確かに生きていると感じる瞬間があって嬉しい。みんな生きていると思う。オレンジ色の服を着たナンパ男も、同じ服を着たその恋人も、その男の同級生の彼女も、彼女の友達も、草原でフェンシングの練習に励む男も、鼻血を垂らしてキスを迫る最低な男も、その男の更に上をいく最低な男も(クズがクズを隠そうとせず剥き出しの状態でいる)。
秋日和

秋日和