yukihiro084

プライベート・ライアンのyukihiro084のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
5.0
ニュースで(トロッコ問題)が
問題になっていた。
倫理学なのか心理学なのか、50年も
前からある究極の選択。
ブレーキの壊れたトロッコが走っていて
線路の先にいる5人の人を轢きそうに
なっている。あなたは分岐のレバーの
前にいて、分岐の別のレールには、
1人の人がいる。行き先を変えれば
5人は助かるが、1人は犠牲になる。
5人を助けるために1人を犠牲にするのか?
ある県の小学校で行われた授業らしい。
親がそのプリントを見つけて、
学校にこれはどうなのか?と抗議して
学校が謝罪したらしい。
試しに息子に聞いてみると、
『脱線させる。』と斜め上の答えが
返ってきた。きっとそーゆーことじゃ
ない、と笑い、デンゼル・ワシントン
なら誰も死なせないだろうな、とか、
いやいや、キアヌだったらと考える。
ふと、あの映画に似ているな、と思った。
その作品は5人と1人とかではなく
8人と1人だった。

最初に観た時は、もう2度と観たくない
と思った。その戦闘シーンが
あまりにも凄惨で生々しかったからだ。
カンカンと響く金属音。
破壊されてゆく肉体。
あっさり失われてゆく命。
とにかく冒頭の戦闘シーンは
それまで観たことがないものだった。

たった1人の新米兵士を救うため、
苛烈な戦地に向かう8人の男たち。
当然のように出てくる部下たちの
不平不満。同じ命。葛藤。
トム・ハンクス演じるミラー大尉と
個性的で人間味溢れる男たち。
若きヴィン・ディーゼルが印象深い。
全員愛すべきキャラクターだった。

なんでこんなことをしなきゃ
いけないのか?と問い詰められた
ミラー大尉が答えた言葉が胸を打つ。

数年前、長く勤めていた会社を
辞めたいと妻に言った時、
息子は1歳にもなっていなかった。
先の見えない不安に妻は反対をした。
『息子が物心がついてきた時に、
自分の父親が洗面所で毎朝吐きそうに
なってる姿とか、上司や会社の愚痴を
言っている姿を、見せたくはない。
そんな姿は見せたくない。』と僕は言う。
誇れる仕事と言うより、誇れる毎日を
生きたいと、言った。
妻は反対しなくなった。

息子と並んで歯磨きをする。
カシャカシャカシャ。
もう、えずくこともなくなった。
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