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朝が来るのmuraのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.6
映画が優しい。思うに、この作品の制作に関わった人たちはみんな本当に優しいんだろうなと。

東京都内のタワーマンションで暮らす栗原夫妻。ふたりは6歳の男の子・朝斗とともに、幸せな生活を送っていた。でも実は、朝斗は養子。ふたりには子ができず、特別養子縁組によって生後間もない子を養子に迎えていた。朝斗を産んだのは14歳の女の子・ひかりだった。養子に迎えて6年が経過したある日、夫妻のもとに「ひかり」を名のる女から電話がかかる…

市井の人たちのなかに役者を置き、まるでドキュメンタリーのように「現場」を描いていく。河瀬直美が多用する手法。ここでは不妊治療、養子縁組の「現場」を描くにあたって用い、当然リアルであるために、栗原夫妻の、またひかりの背景が我がごとのように心に迫る。このあたり、本当にうまいと思う。

で、この映画でもっとも評価したいのは、ひかりと1つ年上のカレとの恋愛もしっかりと描くところ。しかも美しく。幼いけれども尊い恋愛の結果として生まれてきた命なんだということをはっきりと示す。このあたりに優しさがあふれる。確かに重くも思えるが、ここが重く思えなければこの映画は意味を失うんだろう。

養子縁組を支援するベビーバトンの施設で、誕生日を祝ってもらうことに静かな感動を示す妊婦の少女が出てくる。単純かもしれないが、ここにグッときた。いやぁ、とにかく映画が優しいよなと。傑作だと思う。
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