やまぞう

カセットテープ・ダイアリーズのやまぞうのレビュー・感想・評価

5.0
1987年、イギリスの片田舎で暮らす移民の少年ジャベド。

パキスタン人の彼は、厳格な父から勤勉であるよう、現実的に生きるよう教えられてきた。
それゆえに、真面目に勉強し、アルバイトをして家計を助けているジャベドなのだが、
実は文章を書くのが好きで、自分が思ったことや感じたことを詩にしたり文章にしたりしている。

移民ゆえに露骨な差別を受けたり、思春期ゆえの厳格な父親に対する反発や、
自身の将来に対する不安などなど、閉塞した日常に悶々とするジャベド。

そんなある日、友人が貸してくれたブルース・スプリングスティーンのカセットテープを聴き、
自分が抱えている気持ちをそのまま歌っている!と、ドハマりするのだが…

音楽は時に人の人生や価値観を変えてしまう程の力がある。

特定のアーティストのファンになる時って、その曲調が好みっつーこともあるけど、
歌詞にジンときたり、ジャベドのように、自分の気持ちにピッタリな歌詞だ!
と思ったのがきっかけ、という人も多いのではなかろーか。

自分はブルース・スプリングスティーンって、名前は知ってるし、曲も恐らく何曲か聞いたことがある程度だけど、
1987年のイギリスで、どんな立ち位置だったのか分かっていればもっと楽しめたかもなぁ。

彼の歌に勇気と希望を与えられ、輝きだすジャベドの毎日。
ブルース・スプリングスティーンの曲は、紛れもなくジャベドの人生に影響を及ぼしたんだなぁ。

父親との確執に悩み、田舎の閉塞感から逃れ、羽ばたいてゆくことを夢見るジャベドだが…

ジャベドの成長譚であるのだが、それに反対・心配しながら関わってゆく父ちゃんと母ちゃんのエピソードにも結構泣けるものがある。

爽やかで優しい余韻を残す映画であった。
やまぞう

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