へたれ

Winnyのへたれのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
2.5
良かったとこ1 技術面の考証
画面に出てくるWinnyのソースコードがおそらく本物と思しきC++のソースコードだったり、NekoFightで使われているAIのアルゴリズムを法廷で説明する台詞が金子氏本人の説明をそのまま持ってきていたりと、技術的なディテールについてはかなり正確だった。

良かったとこ2 東出昌大の思い切った演技
金子勇氏本人と顔は似ていないものの、大幅増量によって2枚目俳優とは違う何かに変貌。金子氏本人が早口でまくし立てるのに比べると、純真な妖精さんのような方向に振り切っている。モノマネ芸をする代わりに、この映画の中で求められている金子勇像を適切に理解して演じているのは良かった。

ダメだったとこ1 不要なサブプロット
愛媛県警の裏金事件のプロットが全て不必要。Winny(で感染したキンタマウイルス)によって県警内部から情報が暴露されたという繋がりはあるものの、Winny事件とは無関係だし、結局メインプロットに絡んでもいないし、内部告発ものとしての目新しさもないから、やるだけ時間の無駄。

ダメだったとこ2 法廷ドラマとしての追い込み不足
この裁判を要約すると、警察に乗せられて「自白」扱いにされてしまった供述をひっくり返せるかどうかという良くあるプロットなので、検察から提出された内容の信憑性を弁護側が崩すことでカタルシスが生まれる。その点を踏まえて「満えん」という単語を巡る尋問が行われるけれど、その追い込みが足りておらず、法廷ドラマとして面白くならない。おそらく裁判記録をベースに台詞が作られたため、実際の裁判でも同じ程度の尋問しかされなかったということだろうけれど、であるとすれば、吹越満にあんなに大芝居をさせて見せ場のようにすべきではなかった。

ダメだったとこ3 Winnyに対する一面的すぎる取り上げ方
金子氏が凄い人だったということとWinnyの功績はイコールではないのに、この映画の中では金子氏とWinnyを同一化してしまっていて、金子氏も凄いしWinnyも時代の先を行っていたかのような変な理屈になっている。Winnyに情報削除機能が無かったことや、キーワード検索で欲しくもないファイルがダウンロードされていたこと、児童ポルノの温床になっていたことなどをすべてすっ飛ばして、Winnyは分散型インターネットの先駆的形態だったかのように扱うことはかなりナイーブすぎる。
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