未島夏

家なき子 希望の歌声の未島夏のレビュー・感想・評価

家なき子 希望の歌声(2018年製作の映画)
3.6
※Filmarksオンライン試写会にて鑑賞



試写会での鑑賞という便宜上、普段はあまり好まない吹き替え版での鑑賞となったが、『ハイジ』や『フランダース』の文脈を幼少期から肌で感じてきた日本人にとって、本作の吹き替え版は非常に受け入れ易い物だったと思う(それでも初見はオリジナルの音声で見たかったが)。

ちなみに日本版アニメーションは未見。



少年時代の波乱に満ちた経緯へ視点を絞り込む事で、過酷な出来事の数々が収まりの良いバランスで描かれている。

老人となった主人公が子供たちへ過去を語り始める形式の導入も、物語のゴールをある種初めから示唆する事でどの年代でも安心して観られる取っ付き易い構成と言える。

そういった作品全体の気遣いと登場人物たちの優しさが相まって、この温かな空気は出来上がっているのだろう。

その一方、過酷な出来事を冷淡に俯瞰したり、主人公の歌声に聞き入る人々の表情の凄みに目を奪われたりと、映画としての視覚的な説得力も十分。



素直に「児童文学が原作の映画と聞いてイメージするもの」がそのまま観れる映画という解釈で間違いはなく、適切なターゲット層の方が観れば感動するのはもちろん、そうでない層にも相応の体験がしっかり用意されている作品だ。
未島夏

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