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犬王のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
4.0
たまたま聴いた「腕塚」があまりに格好よかったので完全にアヴちゃん目当てで劇場へ向かったんですが、よくよく観たら監督・湯浅政明×キャラクター原案・松本大洋とのことで俄然期待が高まりました。これってつまり「夜は短し歩けよ乙女」と「ピンポン」のおふたりがタッグを組んだってことですよね?わおー、そんなの間違いない!はず!

導入部が想定外の現代描写だったのでいきなり面食らいましたが、猛スピードで巻き戻された古の壇ノ浦の磯臭さ、京の都の庶民の暮らしの細やかさったら!たおやかな花鳥風月を松の木の皮の質感に至るまで繊細に描いたかと思ったら、バディの二人が出会ってからは竜巻に呑まれたみたいに時間の経つのがあっという間でした。とにかく演奏シーンが凄くて、ずっと笑いが止まらなかった。「いや、その楽器でこの音は出ないよね?」と思った次の瞬間、コントラバスとアップライトベースのあいのこみたいな演者が出てきて「抜かりねえな!」と舌を巻いてからはあらゆる思考を放棄して目の前の画と音と声に集中した次第です。はー、何だかとにかく凄いもんを観てしまった。スクリーンの奥にジミヘンが憑依した森山未來を観たし、鯨を歌うアヴちゃんは群衆を鼓舞するフレディだった。クライマックスに至ってはもう、平均台と空中ブランコとフィギュアスケートをマッシュアップするアヴちゃんがありありと浮かんできました。たまらんよ。

ついでにわたくし、女王蜂のオールタイムベスト3曲が「デスコ」「ヴィーナス」「火の鳥」なんですね。つまり、音数少なめでバキバキに歌いまくるアヴちゃんが大好物なんです。そういう意味でもめっちゃたまらん。平家物語といえば「浪の下にも都はあるのよ」くらいしか思い出せないわたくしめにも極上のエンタテインメントでございました。
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