真世紀

日本統一35の真世紀のレビュー・感想・評価

日本統一35(2019年製作の映画)
4.2
前作ラストで思わぬお方が生還。舎弟頭・馬場(桑田昭彦)!侠尽会での偽装工作から戻り、本部長ポストを要求した直後にひき逃げされたという経緯から、てっきり氷室(本宮泰風)と田村(山口祥行)に裏で消されたとしか、見えなかったんだけど、そこはさらっと軌道修正。氷室らの策で死んだことにして療養していたとのこと。でも、馬場さんぐらいの葬儀となると全国の親分衆が参列したりしただろうし、壮大に義理を欠いてないか、生きててよかったねではすまないのではと思ってしまう。

そんな馬場だが、幹部会に復帰早々、前作までの未処理事項、植木(永倉大輔)銃撃を実行した丸神会に連なる「みちのく一家」への報復について、みちのく一家総長に若い頃に助けられた義理から自分におさめさせてくれと願い出る。

馬場の過去の回想シーンまで出てくるんだけど、川谷会長(小沢仁志)宅での姐さん(飛鳥凛)も交えての氷室との会話で「『人生劇場』そのまんまやろ」と映画を元に盛ってる疑惑を口にする川谷。若い二人が観ていなくて、氷室も「あれじゃないですか、『座頭市』みたいなやつですよ」と普段の氷室とは思えぬ適当ぶりを口にし出す映画談義が楽しい。

でも、自分も東映やくざ映画は「仁義なき戦い」から入ったもので、実録路線やその前哨戦的な作品(「現代やくざ人斬り与太」とかさ)を中心に追いかけていて、当初からの任侠路線はそんなには観ておらず、「人生劇場」もこれが路線のオリジンにあたるとは知っていても、未見。なので実は氷室を笑えないんだよな。

妙に長くなったけど、実は本作、全てを持っていくのはみちのく一家総長の春日巳代松(渡辺哲)。なんですか、この愛らしいキャラ(爆)。的屋稼業に誇りを持つ頑固者なんだけど、会いにきた氷室らに主張の強引さを指摘されると激昂、発作も起こしてぷるぷるしだしちゃう。さすが、息子があのプロレスラー・アントーニオ本多だけあるよ(そういや、親子でDDT両国国技館のリングに立つ試合も観たなぁ)。

おまけに横でかいがいしく面倒を見るのが「仮面ライダーウィザード」ヒロイン・コヨミ役の奥仲麻琴で、「よくできたお孫さんだなぁ、このシリーズで水商売関連でない女性が出てくるの早々無いよなぁ、沖縄のかつてのドンの孫娘とか以来?」とか、思って観ていたら、実は春日総長の姐さんと判明、氷室、田村ばりに驚いたよ。

そんな総長の一家うちのトラブルをほっとけないと影で助けに回る氷室、田村という前作までの丸神会との政界をも巻き込んでの対決とはだいぶテイストを変えてきた単発エピソード。シリーズ中でも屈指の愉しさでした。
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