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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのmaverickのレビュー・感想・評価

4.9
2018年の『ブラックパンサー』の続編であり、「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)の30本目の作品。


ブラックパンサーこと、ティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンが2020年に死去。その彼に対する最大限の敬意が本作には込められている。ワカンダの王ティ・チャラがこの世を去り、その深い悲しみの中で前へと進む者たちを描いた物語。役者としてのチャドウィックも、MCUのキャラクターのティ・チャラも、どちらも計り知れない存在だったのだなと痛感する。愛する人を失うのは辛い。だがその悲しみと対峙し、乗り越えることで心は浄化されるのだと伝える話だ。チャドウィックへの思いを脚本にしたためたライアン・クーグラー監督は素晴らしいし、それを支えるキャストの熱意も半端ない。

今作は、ティ・チャラの妹シュリの成長物語でもある。前作のおてんば娘とは大きく印象が異なる。演じるレティーシャ・ライトは必然的に大きな役割を求められたが、それにしっかり応えている。最愛の家族を失った悲しみと、国を守るために立ち上がる強さと、そうした部分での彼女の熱演が光る。何度も目頭が熱くなった。

熱演に関しては、母であり女王であるラモンダを演じたアンジェラ・バセットの迫真の演技も圧巻。強さだけでなく、愛を持って娘を導く優しさも印象的だ。前作から存在感は圧倒的だったが、今作では非常に重要な役どころとして出番がさらに多いのが嬉しい。

今回の敵は『アバター』のような青い魚人。海のワカンダといっていい位置付けだ。ちょっと地味なんだけど、世界観は好き。今作だけなのはもったいないくらいに深みのある設定だ。今後の再登場を期待したい。

元々はチャドウィックありきで続編は構想されていた。彼の死によって大幅に脚本は書き直されたわけだ。その影響もあってか、あまり時間をかけて練られていないと感じる部分もある。戦闘シーンの演出もイマイチなところがあったり。特に後半かな。元はチャドウィックのブラックパンサーと、本作のヴィランとの対決だったのだと思う。だからシュリを主軸にした戦闘シーンは描き方が少々弱い。他の出演女優のように体作りをする時間もなかっただろう。それでも可能な限り頑張っていたし、ここまで大幅に修正して成り立たせているのは凄いと思う。敬意を表したい。

壮大で感動的な話。でもMCUテイストのコミカルさもちゃんとある。新キャラのリリがそのポジションを担っていて良いバランスだった。オコエとシュリの漫才みたいなやり取りも微笑ましい。MCUらしい繋がりやサプライズといった部分でも大いに楽しめる。ここも期待以上に楽しませてくれた。


ライアン・クーグラー監督らしい作風で実に重厚だった。チャドウィックへの愛を一心に感じさせる素晴らしい出来。最後はエンドロールを見ながら涙が止まらなかった。ブラックパンサーはティ・チャラと共にある。ワカンダフォーエバー。3も是非ライアン監督でお願いしたい。
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