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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのFのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ティ・チャラ、そしてチャドウィック・ボーズマンよ、永遠に。
チャドウィック・ボーズマンの訃報から、この作品のシュリのように立ち直れていない自分がいて、悲しみをずっと引きずっていたんだけど、ワカンダフォーエバーでmarvelを上げてファンと共にティ・チャラとチャドウィックのお葬式をやってくれた、そんな映画だった。彼の死はとても悲しいし、映画、またはヒーロー、そして黒人という世界の大いなる損失だけど、私たちはそれを胸にしながら次に進んでいかなければならない、というようなメッセージも勝手に感じた。
彼の死の何が一番やるせなく、私を悲しませるかといえば、彼と私は同じ病気で、私は生きてるのに彼は亡くなってしまった。その少し前にも同じようにして友人も失っていたので、当時の私には相当のショックがあったと思う。
シュリが許せないのは自分で、日常が壊された喪失感に怒りを覚えている。そして世界は自分たちをそっとしておいてくれない。それはそうだよね。ヴィブラニウムなんていうすごい鉱物を独占している国が急に出てきたら、アメリカや(作中には出てこなかったけどロシアや中国なんかの)色々な国が脅威を感じるし、世界のリーダーシップを取ってきた国からは煙たがられる。そういう兄の死を受け入れられない、受け入れる時間も余裕もないシュリが、本当にずっとかわいそうでたまに見ていられないような表情をするのが辛かった。1作目の彼女はもっと快活で笑顔が印象的だったのに。だからか、オコエが外にシュリを連れ出してアメリカで会話をしてる時は、少し楽しそうで嬉しかったかな。そして自分たちと同じような隔絶した世界に住む人々とそのリーダーに出会い、母を失い、彼女がそれでもネイモアを殺さずに踏みとどまったのは、彼女自身の高潔さによるものだし、それはティ・チャラの、ブラックパンサーの後継者たるもののもつ魂の本質であってほしい。ストーリー的には、双方の国に遺恨を残す形でおさまってしまったので、今後また民衆の中にわだかまる感情が噴出する時があるのではないかと心配にもなる。
EDまるまるかけて我々観客にシュリと同じように死者との別れの儀式をさせてくれたことは感謝しかない。
作中やはりオコエやエムバクは、今回必ず暗くなってしまうストーリーの中に少しの和やかさや笑いを届けてくれる存在として、やっぱり好きだなと思う。アメリカでのオコエのファッションは、草間彌生なの?!とツッコみたくなったし、それからもいちいちファッションがパリコレみたいで、ワカンダファッション写真集とか出してほしいくらい。エムバクは前回はティ・チャラと肩を並べる兄弟や友人的な立ち位置だったけど、今回はシュリを敬いつつも彼女を気遣う兄のような側面も見せてくれて、イケゴリラかよ…となることしばしば。私も本とか読んでると思ってなかったから、ごめんよ。
今回はマヤとかのメソアメリカをモチーフとした新しい勢力が出てきたわけだけど、海に生きる人間だったら例えば水掻きのようなものが発達してるとか、深海に住んでるなら目が少し退化してるとか(まあ太陽あったけど)そういう身体的な特徴がもっと見られたらもっと好きだったかな。体が青いのもなんでだろ。青い肌の人間好きなので嬉しいけど、魚が青いのは鳥から見えにくくするためとか色々理由があるけど、あの人たちは海の生態系で割と上の方っぽいから。シャチに乗ってきたのは殺意がエグすぎて怖かった。シャチはやべーよ。今後彼らがこの世界にどうやって絡んでいくのかが心配過ぎる。
アイアンハートに関しては今回は顔見せのみ?あまりストーリーに対して装置的な意味合いのほか、精神的に重要な役割をしたようには見えなかった。ハートにまつわるモチーフが多いので、もう少しそこで劇的な演出があるかなと思ったけど、そんなことはなかった。アイアンハートのスーツはなんというかジャパーニーズアンドロイドみたいなそんなデザインでかわいいけどサブカルみをすごく感じた。
今回賞賛したいのはもちろんシュリ役のレティーシャもなんだけど、一番は女王ラモンダのアンジェラ・バセットかな。王であり母であるという演技の迫力。全てを捧げてきたのは私の方だ!っていうのは、確かにその通りだと思った。そこで王族が声を荒げるべきではないのかもしれないけれど、でも彼女に共感できる部分は多いと思う。あとはお召のドレスがいつも素敵。腕も鍛えたのかな。すごく力強い出立で、国連での演説の時の迫力は一番すごかった。
ワカンダよ永遠に。そして我らが黒豹の王、ティ・チャラとチャドウィック・ボーズマンの御冥福を心よりお祈りいたします。
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