よしまる

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのよしまるのレビュー・感想・評価

4.2
 お休みしていてレビュー漏れしているのがあるので続いてこちら、、

チャドウィック・ボーズマンの死がMCUにもたらした影響は計り知れない。
全米に限れば、前作ブラックパンサーの歴代興行収入は6位。2位のEG、8位のIWも出演している。現在瓦解とも言うべき状態のアベンジャーズも、彼がいればまた違った展開をしていたことだろう。

本人の意思は分からないまでも、とにかく
製作側はチャドウィックのティチャラを尊重し、彼と共にキャラクターを葬る覚悟を決めた。
所詮は被り物ヒーロー、役者を変えてシレッと製作することもできた。実際チャドウィックの実弟は、彼はティチャラというキャラを自分と共に抹消することを望んでいなかっただろうとコメントしている。

それを許さないほどにチャドウィックの作り上げたティチャラ像は絶大で、本作は彼の死を「無かったことにしない」という強固な意志を感じさせる追悼作となった。

冒頭、なんと病に倒れたティチャラの死、そして葬儀が5分以上にわたり丁重に描かれる。まるでチャドウィックの葬儀を再現でもするのかというほどに大規模な撮影、女王ラモンダは凛として、逆にオコエは大粒の涙を流し、みなその死を悲しんでいる。
マーベルスタジオロゴのオープニングは珍しくまったく無音(!)。まるで黙祷のような沈黙の中、在りし日のティチャラがフラッシュバックし、ロゴカラーはブラックパンサーの紫に染まる。涙。

まったく、こんな映画は後にも先にも無いんじゃないか。1人の俳優の死が、そのキャラクターの死に重ねられ、なぞらえた映画が作られる。
内容は彼の意志を継ぐというその一点に集約され、そして後継者が誕生して物語は終わる。

マーベルではEGに継ぐ長尺で、1作品としては冗長な部分もあるにはある。それでもこの作品にはこれだけの時間をかけるだけの理由があったのだと思いたい。

原作ではトニースタークの後継者となるアイアンハートが颯爽登場(ドラマシリーズはだいぶ延期されているが…)、あるいはミッドナイトエンジェルとなり新たなステージへと踏み出したオコエたちドーラミラージュもラストにエヴェレットとの絡みを見せて今後の活躍を期待させる。
そのエヴェレットと絡みをみせたのは、ファルコン&ウィンターソルジャーやブラックウィドウで姿を見せていたヴァレンティーナ!彼女はサンダーボルツのメインキャラ。こうしたMCUならではの連続性もしっかり楽しませてくれるのが心憎い。

もっとも、この後のクアントマニア、マーベルズや乱発されるドラマシリーズでは迷走を始めるのだが、、それはこの時点では触れなくて良い話。

現実の悲劇を映画とのリンクにおいてしっかりと物語として昇華させ、チャドウィックの意志とティチャラの意志を共に継承した作品作りには惜しみない拍手を送りたい。
まさにワカンダフォーエバー。