maverick

シン・ウルトラマンのmaverickのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
4.3
2022年の日本映画。企画・脚本は庵野秀明、監督の樋口真嗣による『シン・ゴジラ』の製作陣によって作られた、『ウルトラマン』のリブート作品。


期待と同時に不安もあったが、これは素直に面白かった。特撮好きの自分としては純粋に楽しめる部分が多く、『ウルトラマン』へのリスペクトも多大に感じて嬉しい。エンタメ映画としても申し分なく、迫力の映像とスケール、それに負けない脚本とで盛り上がる。役者は演技力がある布陣なので安っぽさもない。単に『ウルトラマン』の映画として以上の、日本映画の一級レベルの大作に仕上がっていると感じた。

『シン・ゴジラ』でもそうだったが、随所で庵野秀明の色を感じさせる。言ってみれば『ヱヴァンゲリヲン』+『ウルトラマン』であり、これを許容出来るかによっても評価は変わってくると思う。また、『ウルトラマン』にどう思い入れがあるかによっても同様だろう。自分はゴジラ好きなので、前作『シン・ゴジラ』には不満も多かった。でも『ウルトラマン』に関してはゴジラほどの思い入れはないので、新たに解釈された本作を楽しめたような気がする。思い入れが強い人ほど「こんなのウルトラマンじゃねぇ」という気持ちになるのではないだろうか。

現在の日本にウルトラマンが現れたら、という作風。その描き方は『シン・ゴジラ』と同様で、怪獣や異星人の来襲に現代の技術でどう対処するかが描かれる。アメリカを始めとした諸外国との関係性も面白い。対応を巡って右往左往する政府に今の日本が表れている。その中で自分達の信念の下、仕事を完遂しようとする禍特対(カトクタイ)の面々に感動を覚える。ウルトラマン頼りじゃなく、人類も知恵と勇気を結集するという話が良かった。

ウルトラマンに変身する主人公が斎藤工という人選も良い。長澤まさみも安定した演技力と華とで好感触。メフィラス星人役の山本耕史、チーム長の西島秀俊も良かった。津田健次郎、山寺宏一という声優のキャスティングも良い。実力重視での人選というのが本作の優れている点。意外性もあって楽しめた。

オープニングからレトロな質感でわくわくさせる。こういうマニアックな部分と、今風の要素を融合させたのが本作の作品性でもある。ウルトラマンがCGなのもそうなのだが、個人的には重さが感じられないのが残念だったな。着ぐるみとまではいかなくても、重厚感の動きは残してほしかった。エヴァもスリムで素早い動きだけど、ずしりとした重みの表現がある。そういうのが欲しかった。CGの技術力に関しては凄いと思う一方で、そうした表現はまだまだかなと感じた。


オリジナルの良さは超えれないけど、これはこれで新鮮だし十分に面白かった。『ウルトラマン』の良さをベースに、庵野秀明らしい解釈が盛り込まれている。昔のまま作り直しても確かに意味がない。現代らしさも取り入れて、今の世に受け入れられる作品とする必要がある。本家のシリーズとは別に、新たな良い部分を提示出来たのではないかな。

いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。「不易流行、私の好きな言葉です」。
maverick

maverick