あーさん

みをつくし料理帖のあーさんのレビュー・感想・評価

みをつくし料理帖(2020年製作の映画)
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実は今作を観たのは、昨年の10月末。
少し寝かせようと思っていたら、いつの間にか一年以上の時が経っていた。。

今は亡き父が読んでいた高田郁の"あきない世傳 金と銀"という本が面白いというので、取り急ぎそれまでに出ている9巻(現在は11巻まで発売中)を読み始めたら、これが止まらない!
歴史小説はやたら長いし、女性の描かれ方が何だかなぁ(あくまでもサブ的な位置付け)…というイメージがあり、あまり手に取って来なかった。が、この女流作家の作品は違った!
主人公の女性が、どんな逆境にあっても不屈の精神で運命に立ち向かっていく姿は、時代や環境のせいにして不平不満を言っているだけの人に是非読んでもらいたい!
現代に生きる私たちにも生きていくヒントがもらえるし、元気が出るし、勇気が湧いてくる!

そんなこんなですっかりハマって、次に手に取ったのが同じ作者の"みをつくし料理帖"。
こちらも、寝る間を惜しんで読みたくなるほど面白いので、毎日ここまで!と決めて読まなければならない程、引き込まれた。(また、出てくるお料理が全て美味しそうで。。)
食べることも料理をすることも好きだった父なので、あれを作ろう、これを作ろう…と思いながら読んだのだろうな。
今作は、父が読み終わった物を実家から全巻送ってもらった。
読み終えてしまうのが惜しくて、慈しむように少しずつ読んだ。
そんなタイミングでの映画化。。
その頃はまだ元気だった父と、この本の内容や映画の話をしたのがついこの間のように思う。
私が観た映画の話をすれば、"映画も良いけど、本も読みなさい"とよく言われたなぁ…。
それからは、なるべく原作本も読むようにしたんだっけ。
今思えば、本当に貴重な時間だった。。

市井の人々の悲喜交々の話が好きで、山本周五郎や藤沢周平などの本を好んで読んでいた父。
こちらもその頃は全く興味がなかったが、父が闘病中に譲り受け、これから父を偲びながら少しずつ読もうと思っている。
自分の境遇を嘆くのではなく、折り合いをつけて前向きに明るく生きる登場人物たち。
父の生き方に通じるものがあるな、と。
決して平坦ではなかった父の人生だが、ここから学ぶことも多かったのだろうな。

さて、映画の話。
原作を半分ほど読んでからの鑑賞。

おそらく角川春樹の監督最後の作品、との事で、過去作の角川ファミリーが集結。
昭和世代には、要所要所に懐かしい顔が配置されていて、なかなか面白いキャスティングになっている。

料理人として江戸で名を馳せていく主人公の澪に松本穂香、幼馴染のあさひ太夫・野江に奈緒。
二人とも幼い頃に災害で天涯孤独になる壮絶な体験をしているのだが、健気で凛としていて出ているだけでほっこりする♪
このフレッシュな二人が、ともすれば昭和カラー全開になりがちな俳優陣に、新しい風を吹き込んでくれているのではないかな。

幼い頃に両親を失った澪を見かねて手元に置くことになった大坂の天満一兆庵の元女将・芳役の若村麻由美がめちゃくちゃ着物が似合うし、また風格が ザ・ご寮さん!

その後、澪を店に雇うことになる江戸は神田の蕎麦処つる屋の主人・種市役に石坂浩二。
蕎麦屋の親父にしては、この方いささか上品過ぎるきらいがあるけれど(私の中で、種市は笹野高史のようなもっと庶民的なイメージ…)、角川ファミリーなので♪

ドンピシャだったのが、つる屋の常連で御膳奉行の小松原役・窪塚洋介!
いやーやられた!!
ドラマ版では森山未來だったらしいけれど(未見だが、そちらも合ってそう!)、これはね〜無条件でカッコいい。。着物似合う〜

そして、事あるごとに澪や江戸の人達の力になってくれる町医者・源斎役の小関裕太も一昔前の向井理のようで、品があってお医者さん役にぴったり♪

中村獅童の又次(野江の所属する扇屋の料理番)も良かったし、鹿賀丈史、榎本孝明、永島敏行らの重厚感たるや。。
チョイ役に野村宏伸(この方しばらく見てないと思ったら、色々あったんだ…)なんかを繰り出してくるあたり、さすが角川!

薬師丸ひろ子(つる屋常連の戯作者の妻役)と渡辺典子なんて、元角川の三人娘♪豪華だな〜

そして、極めつけはあの戯作者に藤井隆⁈
確かにおしゃべりだし、いちゃもんつけそうだけど。。笑

そんな感じで、内容もさることながら、'角川祭'感覚で楽しく観られる!

♪コーンコン がややくどいかな?と他の方が書いてらっしゃるように、やっぱり私も感じてしまったけれど笑、そんな枝葉のことはどうでもよくなるくらい、個人的には忘れられない作品となった。

笑いあり、涙あり。
容赦なく降りかかる人生の苦難にも、果敢に立ち向かう主人公の姿にハラハラ・ドキドキ。
過酷な運命にも負けじと助け合い、寄り添い合う人々の愛おしさ。。

あの世界に生きている人々の息づかいが、確かに聞こえてくる作品になっていた。

手嶋葵の主題歌"散りてなお"が、秀逸。



父との思い出と共に、
ずっと忘れません。。
あーさん

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